タイ商務省の原産地自己証明制度セミナー、事後確認リスクに対応呼びかけ

(タイ)

バンコク発

2023年03月23日

タイ商務省外国貿易局(DFT)は2月22日、タイ東部パタヤ市で輸出事業者向けに自由貿易協定(FTA)の自己証明制度に関するセミナーを開催した。同制度は、DFTが発給する原産地証明書(CO)に代わり、輸出者が自ら原産地を証明、申告する仕組み。迅速性や効率面でメリットがあり、DFTは利用企業の拡大を図っている。

タイでは、ASEAN物品貿易協定(ATIGA)、スイス・ノルウェー向け一般特恵関税制度(GSP)、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定で自己証明制度が利用できる。輸出者は原産地の自己証明を行うに当たって、認定輸出者としてシステムに事前登録する必要があり、オンライン動画で登録方法が周知されている〔ATIGA:ASEANワイド自己証明(AWSC)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますスイス・ノルウェー向け登録輸出者制度(REX)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますRCEPの認定輸出者向けシステム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕。

原産地の自己証明は、請求書やデリバリーオーダー、パッキングリストなどの商業文書(RCEPの場合は会社のレターヘッドを用いても可)に認定輸出者番号などを記載するかたちで行われる。当該文書には、必要情報が全て記載されている必要がある。原産地の自己証明に際して、輸出者は前述の認定輸出者登録のほか、必要書類の提出・保管、コンプライアンス・検認を目的とした事業所検査など、規定された手続き・要件に従う必要がある。

自己証明制度の場合の原産性判定

なお、自己証明の場合であっても、輸出品の原産性判定は求められる。従来のDFTによる第三者証明と変わらず、関税分類(HSコード上2桁)が第25~97類の物品の場合、DFTの原産地規則検認システム(ROVERs)を通じて、当該物品の原産性判定結果を得る必要がある。ROVERsに提出された情報に基づき発行された原産性判定結果は、原則2年間有効となる。なお、第1~24類の物品(農水産品・食品など)の場合は、簡素化のためROVERsを通じた判定は不要だが、所定の原産地資格審査申請書に記入が必要だ。

昨今の留意点として、DFTによれば、仕向け地の税関当局からCOについて疑義が持たれ、事後確認(検認)を求められるケースが散見される(添付資料参照)。DFTは、相手国当局からの要請に従い、輸出者に対して関連書類の提出を求めたり、生産工場の検査などを行う。輸出者は検認に備え、少なくとも5年間は関連記録を保存しておかなければならない。検認作業は、相手国当局から要請を受けてから2~3カ月かかることもある。

ROVERsの情報などを改ざんしたり、必要な証憑(しょうひょう)資料の提出を怠ったりした輸出者には行政罰が科される(原産性判定結果の取り消し、CO発行停止など)。検認の影響を受ける可能性のある事業者は、DFT事後原産性検認班(+66-2-547-4763)、迂回検認班(+66-2-547-4823)にアドバイスを求めることができる。

(北見創、シリンポーン・パックピンペット)

(タイ)

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