2022年の出生率が1.05と過去最低、政府は子育て支援拡充

(シンガポール)

シンガポール発

2023年03月02日

シンガポール統計局によると、2022年の永住権者を含む出生率(合計特殊出生率)は暫定値で1.05と、過去最低を更新した。政府は2023年度政府予算案(2月14日発表)で、育児支援金の増額を発表した。また、政府が給与を助成する父親の育児有給休暇期間を2025年1月1日から4週間へ延長する。

統計局によると、同国の出生率は2000年の1.60から、2022年に過去最低の1.05へと低下を続けている。出生数は2000年の4万4,765人から、2022年に3万2,417人へと減少した(添付資料図参照)。インドラニー・ラジャ首相府相兼第2財務相兼第2国家開発相は2月24日、国会での予算審議で、2022年に出生率が落ち込んだ一因として、通常は中国系の間で出産を避ける人が多い寅年だったためと述べた。また、全体的なトレンドとして、国民の間では「結婚と出産を先延ばしにする人が増えているとともに、子どもの数も減っている」と指摘した。

ローレンス・ウォン副首相兼財務相は同日に発表した2023年度政府予算案の中で、同月14日以降に出生した国民の子どもの親に支給する育児支援金「ベビー・ボーナス」について、3,000シンガポール・ドル(約30万3,000円、Sドル、1Sドル=約101円)の増額と支給期間の延長を明らかにした。これにより、両親への支給額は第1~2子について総額1万1,000Sドル、第3~5子に総額1万3,000Sドルとなる。支給期間について、現行の出生後18カ月間の5回分割支給を、子どもが6歳半になるまで6カ月ごとの支給とする。

また、政府は子どもの医療費や保育園の費用に使える「育児支援口座(CDA、注)」への政府支出金も最大3,000Sドル増額する。この結果、第1子を出産した国民の親への政府の育児支援総額は第1子について最大で総額2万4,000Sドル、第2子以降について同3万7,000Sドルとなる。

さらに、政府は2025年1月1日から、政府が給与を助成する父親の育児有給期間を現行の2週間から4週間へ延長する。2週間の延長分は任意とし、雇用主が追加で2週間の育児休暇を従業員に与える場合に、政府がその期間中の給与を助成する。政府は将来的には、追加2週間分を雇用主の任意ではなく、義務とする方針だ。

(注)育児支援口座(CDA)は、国民の子どもの出生時に開設される口座。政府は出生時に1人当たり5,000Sドルを同口座へ支出。その後、親が同口座に振り込む度に、政府がその振込額と同額を振り込む(上限1万5,000Sドル)。口座のお金は子どもが12歳になるまで、保育園や医療費、保険金などの支払いに使用可能。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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