シリコンバレー銀行破綻などの影響に対するVCやスタートアップなど関係者の見方

(米国)

サンフランシスコ発

2023年03月22日

ジェトロは3月13日~16日、シリコンバレー銀行(SVB)とシグネチャー銀行の経営破綻(2023年3月13日記事参照2023年3月14日記事参照)や、信用不安が懸念される金融システム(2023年3月17日記事参照)に対する影響・見方について、ベンチャーキャピタル(VC)やスタートアップなど関係者にヒアリングを行った。ヒアリング結果の概要をまとめると以下のとおり。

〇VC

  • 当社のポートフォリオの範囲内では、100%の預金保護のおかげで状況はこれまでのところ安定しており、ビジネスや財務に深刻なダメージを与えることはない。SVBの経営破綻とは関係なく、一般的に2022年から資金調達がタイトになっているが、これまでのところ、その傾向は景気後退ではなくバブルの正常化と見なされている。少なくともSVBの経営破綻は、当社の投資心理に影響を与えていない。

〇シリコンバレー進出日系スタートアップ

  • 当社はSVBに預金していないが、周囲で資金を預けていたスタートアップはいた。連邦政府がSVB、シグネチャー銀行の預金を全額保護することで、影響は大きくないと思う。他方、銀行が連鎖倒産した場合に、連邦政府が2行以外も救うのか疑問。なお、預金保護は、景気対策やテック企業の株価下落の根本的な解決にはならない。
  • 当社のメインバンクは他行だったので直接的な影響は受けていない。ただ、そのメインバンクへの影響が懸念されたので、大手を含めた複数の銀行に分散して預金を行った。すでにSVBへの預金は他の銀行に移し終わった。
  • 破綻した銀行で新規口座開設を進めていたが、営業停止となったため、同銀行での口座開設を見送り、他の銀行で開設することにした。

〇経済団体

  • SVBの経営破綻は、ベイエリアだけでなく世界的なスタートアップコミュニティーにとって損失。VCの投資を補完するデットファイナンスを提供するという独特のビジネスモデルは、多くの若い企業の成長にとって重要だ。ここ数年見られたスタートアップブームが冷めつつある中、SVBを失うことで、新しい企業の資金調達はより困難になるだろう。

〇金融機関

  • 預金が全額保護されることになり、直接的な懸念は限定的と見ている。他方、金融の信用創造機能が落ちると、短期の金融市場がスローダウンして、市場全体に影響を与える可能性はある。また、中小の銀行から大手の銀行への資金の移行が進む。連邦政府が、今後、中小の金融機関への規制が強めるのであれば、それらの金融機関のビジネス機会を奪うことにもなる。
  • (SVBが経営破綻した日の翌営業日である)13日(月)は、信用不安が噂される銀行から預金を下ろすための長い列ができていた。だが、翌14日(火)には、その動きが落ち着いていたように見える。

(石橋裕貴)

(米国)

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