UAE政府機関はフリーゾーンを含め模倣品取り締まり強化の姿勢

(アラブ首長国連邦、日本)

ドバイ発

2023年03月10日

ジェトロは2月13~17日、アラブ首長国連邦(UAE)の政府職員(注1)を日本に招き、模倣品(注2)の対策に関する公開セミナーを開催した。また、日本政府機関や国際知的財産保護フォーラム(IIPPF)(注3)、日本企業との意見交換も行った。

欧州や中東、アフリカに流入している模倣品は、世界最大級の国際貿易の拠点であるUAEのフリーゾーンを経由地としていることが長年指摘されている。特に、工場や倉庫が立ち並ぶドバイのジェベルアリ・フリーゾーンは、第三者の立ち入りが困難で模倣品の摘発が難しいとされてきた。そこで、フリーゾーンを中心とするUAEでの模倣品対策について理解を深めてもらい、日本とUAEの相互の理解の深化を図ることを目的として、本招聘(しょうへい)を実施した。

模倣品対策に関する公開セミナーはハイブリッド形式で開催され、対面で12人、オンラインで105人が参加した。UAE側から、各執行機関の紹介のほか、投資家によるUAEへの直接投資を促す環境づくりに務めるべく、UAEの各執行機関による協力体制強化の重要性や、知的財産権の侵害を許さない知財重視の姿勢が示された。

特に質疑応答では、UAEではフリーゾーンや本土を問わず各執行機関が連携しており、日本企業からコンテナ情報や模倣品業者名など手掛かりとなる情報に基づいた申し立てがあれば、水際での差し止めや市場での摘発を実行する用意があるとの発言が得られた。

他方で、適切な情報に基づく申し立てなしでは執行機関は動き難いことや、日本企業によるドバイ税関への商標登録件数が45件と少ないことから、模倣品取り締まり強化のためには、日本企業による積極的な商標登録の必要性も説明された。

IIPPF中東プロジェクトとの意見交換においても、UAE側から模倣品対策に対する真剣な姿勢が強調されたほか、模倣品の摘発に積極的な現地法律事務所との連携が重要であることが説明された。企業との意見交換では、日本企業から情報提供しても執行機関からのアクションがない場合には、UAE知的財産協会(EIPA:Emirates Intellectual Property Association)経由での対応も可能であることが説明された。

ガルフBPG(Gulf Brand Owners Protection Group)からは、模倣品と真正品との見分け方に関する真贋(しんがん)判定セミナーや、模倣品に関する積極的な情報提供を執行機関に対して実施することの重要性、消費者や学生への啓発活動などの取り組みなどが共有された。

本事業により、今後、当地での長年の課題であるUAEのフリーゾーンでの差し止め・摘発の増加につながることが期待される。

(注1)招聘したUAE政府職員は、主に警察や経済省で構成される政府系機関のUAE知的財産協会、UAE政府機関職員(ドバイ警察・検察・税関、シャルジャ警察)のほか、中東地域の執行機関などに対して積極的に研修や啓発活動を実施している民間の知財保護団体のガルフBPGのメンバー。

(注2)模倣品とは、知的財産権のうち、特許権、実用新案権、意匠権、商標権を侵害する製品。著作権、著作隣接権を侵害する製品は海賊版という。本記事では、模倣品と海賊版を総称して模倣品と呼んでいる。

(注3)民間企業と連携として、模倣品・海賊版などの海外における知的財産権侵害問題の解決をめざす企業・団体の集まり。

(関景輔)

(アラブ首長国連邦、日本)

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