運輸省、環境に優しい陸海空の輸送イニシアチブ発表

(シンガポール)

シンガポール発

2023年03月07日

シンガポールのS・イスワラン運輸相は33日、2023年度予算審議で、電動化を中心とした環境に優しい陸・海・空の輸送の実現に向けた新たなイニシアチブを発表するとともに、既存の取り組みの進捗状況を報告した。

イスワラン運輸相は陸上輸送での電気自動車(EV)の普及について、新規登録車に占めるEV割合が2021年の3.8%から、2022年に11.8%に拡大したと指摘した。政府は20212月に発表した環境行動計画「シンガポール・グリーンプラン2030」で、2040年までにガソリンやディーゼル燃料の内燃機関車(ICE)を段階的に廃止して、EVを中心に環境に優しい燃料車に切り替える方針を発表している(2022年3月29日付地域・分析レポート参照)。運輸省管轄下の陸運庁(LTA)は20217月、EV普及のためのインフラ支援として、民間高層住宅(コンドミニアム)にEV充電器を設置する補助金「EV共通充電器設置補助金(EV Common Charger Grant)」を開始。33日までにコンドミニアム107カ所でのEV充電器設置を支援した。エイミー・コー上級国務相(運輸担当)は3日の国会で、同補助金の期限を202512月末まで2年間延長することを発表した。

イスワラン運輸相は航空分野について、チャンギ空港内の全車両(エアサイド車両)を2040年までにEVやバイオ燃料など環境に優しい燃料車とする目標を明らかにした。20223月時点でエアサイド車両約2,500台のうち約20%がEVだ。運輸省は同目標達成のため、空港内の乗用車やミニバス、小型トラックなど軽乗用車について2025年からEV化を義務付ける。さらに、フォークリフトやトラクターなど重機でEV化が可能なものについても、2025年から全てEVとする。EVモデルが存在しない空港内の特別車両については、再生可能なディーゼル燃料などの実証実験を行う計画だ。

海運分野について同運輸相は、港内艇(Harbour Craft)の二酸化炭素(CO2)排出量を2050年までにゼロ(ネットゼロ)とする目標を明らかにした。同目標達成のため、2030年までに新規登録する港内艇について、電動化か100%バイオディーゼル燃料(B100)、または水素などネットゼロを達成可能な燃料の対応船舶であることを義務付ける。レジャー用船舶や国内のタグボートについても、2050年までにネットゼロとする計画で、海運庁(MPA)はそれに向けた具体的な計画を2024年に発表する予定。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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