2022年度中東投資コスト比較調査、輸送費は前年比減も依然高水準

(中東、アラブ首長国連邦、イスラエル、イラン、サウジアラビア、トルコ)

中東アフリカ課

2023年03月29日

ジェトロは、2022年11~12月に中東の5カ国5都市を対象に、賃金や地価・事務所賃料、公共料金、輸送および税制などの投資関連コストを調査してとりまとめ、2023年3月14日に調査レポート「2022年度 中東投資関連コスト比較調査(2023年3月)」として公表した(注)。

2021年に新型コロナウイルス感染拡大の影響による世界的な物流やサプライチェーンの混乱を受けて大きく上昇した輸送費(2022年3月10日記事参照)は、2022年はイスラエルを除く全ての国で、前年に比べて大幅に低下した。40フィートコンテナの日本からの輸入にかかる費用については、物流会社へのヒアリングによると、サウジアラビアでは前年の1万3,000ドルから747ドル(東京港・ダンマン港ルート)と約17分の1となった。アラブ首長国連邦(UAE)は8,600ドルから4,750ドル、イランでは1万4,205ドルから6,950ドル、トルコも1万5,200ドルから5,800ドルと、いずれも約3分の1~2分の1となった。一方、イスラエルは前年の4,308ドルから4,700ドルと微増し、2020年に比べて1.5倍以上の水準が続いている。前年比で大幅に低下した前述のUAEとイランも、2020年と比べると依然として2倍前後となっている(添付資料表参照)。

賃金水準を前年度と比べると、UAEとイランでは全体的に上昇した。トルコは、物価上昇を受けて2022年の年度途中にも最低賃金を引き上げており(2022年7月7日記事参照)、年間の名目賃金上昇率は84.5%となったが、現地通貨トルコ・リラ安が進んだことから、製造業・非製造業ともにドル建ての月額給与は下がった。

5カ国で比較すると、製造業のワーカー(一般工)の給与(月額)は、UAE(1,321ドル)やイスラエル(1,977ドル)が相対的に高く、人口が多く、通貨安が進むトルコ(460ドル)とイラン(207~295ドル)で安価になっている。UAEとイスラエルは非製造業のスタッフ(一般職)の賃金水準も高く(UAE:2,031ドル、イスラエル:2,260~3,107ドル)、サウジアラビアも大学卒業者のサウジアラビア人男性が3,502ドルと高水準になっている。

税制については、2022年は大きな変更はみられなかったが、UAEではこれまで無税だった法人税が、2023年6月以降の会計年度から、37万5,000ディルハム(約1,390万円、1ディルハム=約37円)を超える利益をUAE国内(フリーゾーン内取引を除く)で計上する企業に対し、原則9%が課税されることになる(2022年12月13日記事参照)。

(注)各調査対象国の現地通貨は、2022年11月1日付の銀行間レートなどでドル換算している。

(稲山円)

(中東、アラブ首長国連邦、イスラエル、イラン、サウジアラビア、トルコ)

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