2021年は輸送費が高騰、中東5カ国の投資コスト比較調査

(中東、アラブ首長国連邦、イスラエル、イラン、サウジアラビア、トルコ)

中東アフリカ課

2022年03月10日

ジェトロは、2021年10~12月にかけて、中東の5カ国5都市を対象に、賃金や地価・事務所賃料、公共料金、輸送および税制などの投資関連コストを調査してとりまとめ、3月8日に調査レポートとして公表した。

前年(2020年10~12月)の調査結果と比べて、2021年に特に目立ったのは、新型コロナウイルス感染拡大の影響による世界的な物流やサプライチェーンの混乱を受けた、輸送コストの大幅な上昇だ。40フィートコンテナの日本から現地への輸入にかかる費用をみると(添付資料表参照)、サウジアラビアの東京港・ダンマン港ルートでは、前年比で約10倍(2020年:1,384ドル、2021年:1万3,000ドル)にコストが高騰している(注1)。中東の物流ハブであるドバイを擁するアラブ首長国連邦(UAE)も4倍(2020年:2,150ドル、2021年:8,600ドル)、イランでも4倍近く(2020年:3,901ドル、2021年:1万4,205ドル)まで値上がっている。

他方、賃金水準については、前年度と比べて大きな変動はみられなかった。5カ国5都市のコストを比較すると、人口が少ない中で多くの専門的な技術者を擁するイスラエルや、ビジネスコストが上昇しているUAEで高い水準となった。非製造業のスタッフ(一般職)の給与(月額)は、イスラエルが2,553~3,510ドル、UAEが2,565ドルとなっている。人口が多く労働力が豊富なトルコやイランでは相対的に低くなっているが、特に制裁問題が進展せずに通貨リアル安が進んだイランは、イスラエルの10分の1以下の水準となっている(注2)。

税制についても、大きな変更はみられなかったが、法人所得税については、トルコが原則20%の税率を一時的に引き上げている(2021年:25%、2022年:23%)。また、UAEではこれまで無税だった法人税を2023年6月から導入予定(9%)としているため(2022年2月2日記事参照)、注意が必要だ。

(注1)各調査対象国の現地通貨は、2021年11月1日付の銀行間レートなどでドル換算している。

(注2)製造業のワーカー(一般工職)、エンジニア(中堅技術者)、中間管理職(課長クラス)の給与(月額)での比較。

(米倉大輔)

(中東、アラブ首長国連邦、イスラエル、イラン、サウジアラビア、トルコ)

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