世界の先端技術、2030年に9.5兆ドル市場に、日本の準備指数は19位

(世界、日本、米国、中国)

国際経済課

2023年03月29日

国連貿易開発会議(UNCTAD)が3月16日に発表した技術・イノベーション報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、先端技術(注)を扱う世界市場は過去20年で急成長を遂げた。さらに、2020年の1兆5,000億ドルから2030年には9兆5,000億ドル超へと拡大が見込まれる。

2030年の市場規模(推計値)のおよそ半分をIoT(モノのインターネット、4兆4,220億ドル)が占めるほか、AI(人工知能、1兆5,820億ドル)、電気自動車(8,240億ドル)、太陽光発電(6,410億ドル)および5G(第5世代移動通信システム、6,210億ドル)の合計で全体の8割超を占める見通しだ。

ただし、これらの先端技術に関連する知識の集積は、特定の国・地域に偏重している点をUNCTADは指摘している。世界の論文・特許件数をみると、米国と中国が突出しており、論文件数では米中両国が世界全体の3割を占め、特許件数ではその7割を占める。特許件数に関しては、中国が2000~2021年に、AI、IoT、ビッグデータなどインダストリー4.0およびグリーン分野の先端技術で世界の特許件数のおよそ半数(53万6,115件)を占めた。2位の米国(16万9,447件)も、ロボット工学、AI、電気自動車で多くの特許を有する。

また、先進国・地域からのグリーン技術の輸出総額は、2018年の約600億ドルから2021年にはその2.6倍の1,560億ドル超に急増した。一方、新興・途上国・地域からの輸出は570億ドルから3割増の約750億ドルにとどまり、この3年間で、世界の輸出に占める新興・途上国・地域の割合は48%から33%へと低下した。

先端技術を導入するためには、企業の技術的スキルのみならず、各国・地域政府が主導する関連の政策、規制、インフラの整備も併せて重要となる。報告書では、(1)インターネット・スピード、ユーザー数、(2)人材のスキル(教育年数、高技能者の割合)、(3)R&D(研究開発)活動(論文・特許件数)、(4)産業活動(ハイテク製造業・デジタルサービスの輸出)、(5)金融へのアクセスという5つの指標を基に国・地域が先端技術の利用に向けた準備状況を示す「先端技術準備指数」の166カ国・地域のランキングを発表した。

これによると、上位5カ国は米国、スウェーデン、シンガポール、スイス、オランダという高所得国だった。アジアでは、2位のシンガポールに続き、韓国(6位)、香港(9位)、日本(19位)、マレーシア(32位)、中国(35位)がハイスコア国・地域に含まれた。このほか、インド(46位)、フィリピン(54位)、ベトナム(62位)では現地の政策が奏功し、各国の1人当たりGDPを大きく上回るランクに位置付けた。

(注)先端技術とは、(1)インダストリー4.0、(2)グリーン技術および(3)その他を含める17種類。具体的には、AI、IoT、ビッグデータ、ブロックチェーン、5G、3Dプリンター、ロボット工学、ドローン、遺伝子編集、ナノテクノロジー、太陽光発電、集光型太陽光発電(CSP)、バイオ燃料、バイオマス・バイオガス、風力発電、グリーン水素、電気自動車を指す。

(森詩織)

(世界、日本、米国、中国)

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