2023年末までに基本的食料の国内自給率50%目標を掲げる

(アラブ首長国連邦)

ドバイ発

2023年03月22日

アラブ首長国連邦(UAE)の現地メディア「ハリッジ・タイムズ(Khaleej Times)」(3月21日)によると、マリアム・ビント・ムハンマド・アルムハイリ気候変動・環境相は、同省による食料安全保障のためのイニシアチブ「第1回食料安全保障のための国民対話」において、2023年末までにいくつかの基本的食料(注)の需要の50%をUAE国内で生産し、2030年までにこの目標を100%まで引き上げると発表した。

砂漠気候で農業生産に不利な条件のUAEでは、食料安全保障は国家の最重要課題に位置付けられている。UAE政府は2018年に「食料安全保障国家戦略2051外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表し、2051年までにUAEを「世界の食料安全保障指数」で世界一にするという野心的な目標を設定した。その実現方策として、イノベーション技術の活用により、持続可能な食料生産を可能にする包括的な国家システムを構築し、国内生産を強化するとしていた。

この国家戦略を受けて、これまでUAE各地では農業生産へのさまざまな取り組みが続けられてきた。例えば、アブダビでは、米国のエアロファームによる研究開発用で世界最大の屋内垂直農場が2023年2月に誕生した。また商業ベースでは、エミレーツ・グループのブスタニカが、水耕栽培技術を使って葉物野菜を栽培する30万平方フィートの施設を立ち上げ、既にスーパーマーケットなどで販売している。室内栽培だけではなく、シャルジャ首長国にある大規模農場で栽培されたタンパク質強化小麦の初収穫が3月20日にシャルジャ首長出席の下行われるなど、国を挙げて食料安全保障への対策が進められている。

UAEのアグリテックへの投資意欲も旺盛で、2月25日付「ガルフ・ニュース」によると、UAEに拠点を置くアグリテック企業は66社あり、総額で500億ドル以上の投資を受けている。この金額は、アグリテックに投資される世界の資本の約1.1%に相当し、投資は増加の一途をたどっているという。

アルムハイリ気候変動・環境相は「UAE政府は2023年の国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第28回締約国会議(COP28)のホスト国として、農業分野と食料システムのパラダイムシフトを推進するパートナーシップとソリューションを通じて、食料安全保障国家戦略2051の目的達成に向けた取り組みの迅速化に注力する」と述べており、日本のアグリテック企業にも大きなビジネスチャンスとなることが期待される。

(注)基本的食料とは、小麦、野菜、果物などを指す。

(吉村優美子)

(アラブ首長国連邦)

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