経産省・ジェトロのグローバル起業家育成プログラム「始動」、米シリコンバレーへ日本企業を派遣

(米国、日本)

スタートアップ支援課

2023年03月14日

経済産業省とジェトロが主催するグローバル起業家育成プログラム「始動Next Innovator 2022」のシリコンバレー派遣プログラム2615日に実施された。20229月に開始した同プログラムには369人の応募があり、1次選抜を通過した100人が911月の3カ月間にわたって、専門家によるメンタリングや事業プランの磨き上げを図る国内プログラムに参加。さらに2次選抜では、その中の20人が米国シリコンバレーに渡航する派遣プログラムに参加した。このプログラムでは、現地のベンチャーキャピタル(VC)やインキュベーション施設、起業家、スタートアップなどを訪問。参加者は起業家マインド醸成とネットワーキングを図った。

写真 シリコンバレー派遣プログラムの参加者(ジェトロ撮影)

シリコンバレー派遣プログラムの参加者(ジェトロ撮影)

今回のプログラムで参加者から高い評価を得たのは、自動運転システムを手掛ける米国のモビリティースタートアップのガティック(Gatik)への訪問だ。同社は2017年創業、いわゆるシリコンバレーの一画に位置するカリフォルニア州パロアルトとカナダのトロントにオフィスを構え、米小売り大手のウォルマートなど北米の複数の小売事業者とともに、自動運転車を運用している。自動運転システムには競合も多いが、同社は特に120マイル(約193キロメートル)程度の中距離自動運転システム開発に強みを持っており、同社出資者によると、近々、ユニコーン企業(注)になる可能性もあるとしている。同社の最高経営責任者(CEO)のゴーテム・ナラン氏は、競合が存在する市場に挑戦して成功した理由や、資金調達のノウハウを紹介した。さらに、インド出身のナラン氏のように、外国人起業家がシリコンバレーで活躍していることについて、参加者からは「シリコンバレーで起業する人の話を直接聞き、自分の事業がシリコンバレーに進出する際のリアルなイメージができた」などの感想が寄せられた。

同プログラムには、スタートアップだけでなく、大企業からもイノベーション促進という使命を託されて新規事業計画を携えて参加する参加者も少なくない。その1人は今回のプログラムについて、「実際にシリコンバレーのエコシステムを体感できた。特に印象的だったのは、しっかりと周囲に情報をシェアして、投資家やチームメンバーと一緒になって戦うという考え。現地でのキーワードは『一緒に』という言葉だった。また、日本企業だからこそできることもたくさんあると感じた。今後は社内のみならず社外も含めて周囲を巻き込み、日本の産業界全体の高度化に貢献したい」と思いを語った。

また、224日には、「DEMO DAY」と呼ばれる成果発表会が開催された。当日は20人のシリコンバレー派遣プログラム参加者のうち、同プログラム期間最終日の事業発表会で選抜された6人が登壇してピッチを実施。廃棄農作物を活用した持続可能な航空機燃料(SAF)の開発で途上国の貧困解決を目指す日揮グローバルの板垣雄太郎氏が最優秀賞を獲得した。

(注)企業評価額が10億ドル以上、かつ設立10年以内の非上場ベンチャー企業の総称。

(鵜飼夏海)

(米国、日本)

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