2月の物価上昇率は7.62%と高止まり、中銀は見通しを上方修正
(メキシコ)
メキシコ発
2023年03月14日
メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)の3月9日付プレスリリースによると、2023年2月の全国消費者物価指数(INPC)上昇率は0.56%、過去12カ月の伸び率(年率)は7.62%となり、1月末時点より0.29ポイント下落した。INPC年間上昇率は、2022年8月の8.70%をピークに年末にかけて減少していたが、11月の7.80%を底に再び上昇し、2023年1月に7.91%に達した後、低下に転じた。コアインフレ(注)も2022年11月に8.51%に達した後、年末には8.35%に下がったが、1月に8.45%と上向き、2月時点でも8.29%とわずかに低下したが、依然として8%を超える水準で高止まった(添付資料図参照)。この背景には食品価格の高止まりがあり、食品価格は依然として年率13.70%の高水準で推移している。
非コア部門のインフレ率は、野菜・果実の価格が3.02%のデフレとなり、年率でも前月の10.17%から8.12%へと大きく低下した。他方、畜産物の価格は月間2.37%、年率10.22%と上昇傾向が続いている。エネルギー・公共料金の分野では、エネルギー価格が月間0.73%、年率1.50%、公共料金が月間0.96%、年率5.93%の上昇となっている。
全国生産者物価指数(INPP)は2月単月で0.03%のデフレ、年率では3.36%(前月は4.80%)の上昇と低下傾向にある(INEGIプレスリリース3月9日付)。原油価格低下に伴い、ディーゼルなどの石油製品は月間で6.00%、年率でも2.76%の低下を見せているが、消費者物価には反映されていない。この背景には、メキシコ政府がガソリンやディーゼルの価格抑制を目的に導入している生産・サービス特別税(IEPS)の補助政策がある。メキシコではガソリンやディーゼルの消費に際し、1リットル当たり5~6.5ペソ(約37~48円、1ペソ=約7.4円)のIEPSが本来は課税されるが、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領(AMLO)のガソリンやディーゼルの販売価格上昇をINPC以下に抑えるという公約の下、同課税額の大半が免除されてきた。この補助制度の存在により、原油価格が上昇してガソリンの生産者価格(仕入れ価格)が上昇する局面では小売価格の上昇が抑えられるものの、原油価格が低下してガソリンの仕入れ価格が低下する局面は補助額が徐々に小さくなるだけで、短期的には小売価格の低下をもたらさない。
中銀は11月発表の2023年末時点のインフレ率見通しを0.8ポイント引き上げ
中央銀行は3月1日に発表した四半期報告で、2023年末時点のインフレ率見通しを前四半期報告(2022年11月30日発表)時点の4.1%から4.9%に引き上げた。中銀のターゲット2~4%のレンジに収束する時期も、前回見通しの2024年第1四半期(1~3月)から同年第2四半期(4~6月)へ変更し、しばらくはインフレが高止まりするとみている(添付資料表1参照)。2023年の実質GDP成長率については、前回の0.8~2.8%から0.8~2.4%と上限を引き下げた。米国の景気減速が対米輸出に与える悪影響を懸念しているが、内需回復がそれを補うとしている。中銀が3月2日に発表した国内外36のシンクタンクに対するアンケート調査によると、2023年のインフレ率見通しは5.34%、実質GDP成長率見通しは1.16%と、中銀よりもさらに保守的な見通しとなっている(添付資料表2参照)。
(注)天候などによって価格変動が大きい農産品やエネルギー価格、政府の方針で決定される公共料金を除いた価格の指数。
(中畑貴雄)
(メキシコ)
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