遺伝子組み換えトウモロコシを巡る米国との協議、メキシコ政府は具体的な輸出への悪影響の立証を要求

(メキシコ、米国、カナダ)

メキシコ発

2023年03月08日

メキシコ経済省は3月6日付でプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出し、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の第9章(衛生・植物検疫措置)に基づく技術的協議の要請(2023年3月8日記事参照)を米国通商代表部(USTR)から受理したことを明らかにした。2023年2月13日付官報で公布された遺伝子組み換えトウモロコシの使用を制限する政令(2023年2月16日記事参照)に対し、米国政府は遺伝子組み換えトウモロコシが人の健康に与える悪影響を科学的に示すように繰り返し要請してきた。

他方、メキシコは2月24日にUSTRとメキシコ経済省との間で持たれた話し合いで、同政令に基づき飼料用や食品工業用の使用が明確に認められるため、米国のメキシコ向けトウモロコシ輸出には影響しないとし、米国側の主張は通商紛争としての根拠にはなり得ないという立場を示してきた(経済省プレスリリース2023年2月27日外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。3月6日付プレスリリースにおいても、政令の主目的はメキシコに存在する64種類のトウモロコシ(そのうち59種はメキシコの固有種)を保全することとし、主食のトルティージャの原料となる食用トウモロコシのみが規制の対象であること、メキシコは食用のトウモロコシの自給ができていることを主張し、米国政府に具体的な輸出への悪影響をデータで示すことを求めている。

アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は3月7日の早朝記者会見において、話し合いで両国が合意しない場合は、紛争解決パネルに移行せざるをえないだろうとし、同問題は国民の健康を守る観点で重要という考えを示した。政令がUSMCAに違反しないのか、という記者の問いに対しては、世界のどのような協定においても、健康に害を与える商品の売買を認める規定は存在しないとし、国民の健康を保護することは協定上認められる、とする立場を示した。その上で、連邦衛生リスク対策委員会(COFEPRIS)と米国の当局との間で、遺伝子組み換えトウモロコシによる害が存在するかどうかの科学的な分析がなされることに期待を示した(大統領府2023年3月7日付記者会見録外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

農業団体は早期解決を望む

メキシコ農牧業評議会(CNA)は3月7日、ウェブサイト上でプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出し、USMCA第31章の紛争解決プロセスに基づくパネル設置に至る前に、技術的な話し合いにより同紛争が解決することに期待を示した。CNAは、2月13日付の政令で飼料用と食品工業用のトウモロコシが規制対象から外れたことにより、米国からメキシコへのトウモロコシ輸出のほとんど(注)が影響を受けないと強調するとともに、北米における貿易の補完性は地域の食糧安全保障にとって非常に重要であり、将来の課題克服に寄与する、より強固な農業部門を3カ国が一体となって建設していく必要性を強調した。

(注)CNAのフアン・コルティーナ・ガジャルド会長が2月27日に「エル・パイス」紙の取材に答えた内容外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、米国からメキシコへのトウモロコシ輸出の98%が飼料用、あるいは食品工業用の黄色いデントコーンとのこと。メキシコは主食用の白色トウモロコシの自給を達成しているが、物流コスト上の問題から米国産の白色トウモロコシを輸入することがまれにあり、それが米国の対メキシコ・トウモロコシ輸出の2%を占めるという。

(中畑貴雄)

(メキシコ、米国、カナダ)

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