中国でのRCEP協定の原産地証明に関する疑問点、弁護士に聞く

(中国、日本)

中国北アジア課

2023年03月30日

地域的な包括的経済連携(RCEP)協定が2022年1月1日に発効して以降、対中貿易を中心に日本企業によるRCEP協定の活用が進んでいる。ジェトロは3月29日、中国でのRCEP協定の原産地証明に関する疑問点について、金誠同達法律事務所の張国棟弁護士に聞いた。主な内容は以下のとおり。

(問)RCEP協定の税率差ルールを適用した結果、原産国が「中国」となった輸入貨物(注)を中国税関はどのように判断するか。例えば、原産地証明書には日本商工会議所の印が押され、RCEP協定の税率差ルールに基づいて、原産国が「中国」となっている貨物を日本から中国へ輸出する場合、中国税関は便宜上原産国を「中国」ではなく「日本」と判定してRCEP協定に基づく優遇税率を適用するか。

(答)中国税関などに確認を行ったところ、この場合、中国税関は原産地証明書に記載される原産国に基づいて当該貨物の原産国を「中国」と判定するため、RCEP協定に基づく優遇税率の適用は認められないとしている(3月時点の情報)。なお、当該貨物が中国産と判定されても、外国から到着する外国貨物であるため、一般(MFN)税率が適用される。

中国側の輸入業者が中国税関に当該貨物の輸入申告をする際、当該貨物の原産地証明書を含む関連情報を「中国国際貿易単一窓口外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」に入力して報告する必要がある。情報を入力する際は、原産地証明書に記載されている情報をそのまま入力しなければならず、もし原産国が「中国」と記載されていた場合、後に原産国を「日本」に修正して入力することは、3月時点ではシステム上できない。

(問)中国で特定原産地証明書の発給機関として定めている「中国税関」と「中国国際貿易促進委員会(CCPIT)」の違いは。

(答)「中国税関『地域的な包括的経済連携協定』輸出入貨物原産地管理弁法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の第6章第42条では、「中国の証明書発給機構は直属の税関、隷属する税関、中国国際貿易促進委員会およびその地方支部」と定めており、中国税関と中国国際貿易促進委員会の発給するRCEP協定の原産地証明書は、ともに同等の法的効力を有し、申請者は同等の関税上の優遇を享受することができる。

企業は発給機関を自ら選択することができるが、輸出相手国税関が商会などから発行された原産地証明書を明確に要求している場合は、中国国際貿易促進委員会やその地方支部に申請することになる。

(問)RCEP協定に係る手続きを進めるに当たって、中国側で疑問点が生じた場合の相談窓口は。

(答)中国でのRCEP協定に係る主な相談窓口には「中国商務部中国自由貿易服務網」「中国税関総署」「中国国際貿易単一窓口」などがある(各窓口の役割や営業時間、連絡先などについては添付資料表参照)。

なお、ジェトロは2023年1月6日、RCEP協定に関して「原産地証明の原産判定・証明書発行の流れ・手続きと留意点PDFファイル(750KB)」と題した解説記事を金誠同達法律事務所の協力を得て掲載している。

(注)RCEP協定では、税率差ルールにより輸出締約国が直ちにRCEP原産国とならない場合には、当該原産品の生産に使用された原産材料のうち、合計して最高価額のものを提供した締約国がRCEP原産国となる。詳細はジェトロ「RCEP協定解説書PDFファイル(12.0MB)」p29~30を参照。

(片小田廣大)

(中国、日本)

ビジネス短信 036e78bbaeb22df3