電子関連大型投資で、2022年の固定資産投資額が過去最高に

(シンガポール)

シンガポール発

2023年02月15日

シンガポール経済開発庁(EDB)は29日、同庁が管轄する固定資産投資額(FAI、コミットメントベース)が2022年に過去最高だったと発表した。FAI225億シンガポール・ドル(約22,275億円、Sドル、1Sドル=約99円)だった。エレクトロニクス関連の大型投資が、2022年のFAI全体を牽引した。

2022年のFAI67%をエレクトロニクス分野の投資(1499,400Sドル)が占めた。同年には、台湾の半導体受託製造会社聯華電子(UMC)が、シンガポール国内の既存工場(300ミリのウエハー工場)に隣接して、新たな工場建設を発表した(投資額50億米ドル、202224日発表)。第1期工事(ウエハー月産能力3万枚)について、2024年後半に稼働を予定している。また、オランダの半導体製造装置会社ASMインターナショナル(ASMI)は2022328日、最先端の工場の正式開設式典を行うと同時に、同工場の2階の拡張工事の着工式を行った(投資額非公表)。拡張工事が完成すれば、ASMIのシンガポールの製造能力はこれまでの4倍となる見通しだ。さらに、米国の半導体向けろ過・分離・精製会社ポール・コーポレーションは同年830日、新しい工場の着工式を行った(投資額1億米ドル、2023年後半~2024年前半の完成予定)。

2022年のFAIを国・地域別にみると、米国が50.6%と最大の割合を占め、次いで欧州が21.2%を占めた。また、2022年には中国からのFAIが全体の8.5%を占め、2021年の1.1%を大きく上回った。中国の主な投資案件としては、医薬品受託研究開発製造会社ウーシー・バイオロジクス(WuXi Biologics)が2022719日、シンガポールに新規設置する製造・研究施設に10年間で14億米ドルを投資する計画を発表した。医薬品の治験開発製造受託会社ウーシー・アップテック(WuXi AppTec)も同日、シンガポールの新たな研究・製造施設に約20Sドルを投資すると発表した。EDBは「中国や他の北東アジアの諸国・地域から、成長する南アジアや東南アジア市場への進出の意欲が高まっている」と指摘した。なお、FAIに占める日本の割合は2021年の1.7%から、2022年に0.3%へと縮小した。

EDB2023年のFAIの見通しについて、「世界的な経済の見通しが不透明化している上、半導体の需要が急速に減速化しているのを受けて、2022年と同じ水準を維持できないだろう」とみている。その上でEDBは、中長期のFAI目標として「80億~100Sドル」(注)を維持した。

(注)EDB2020年から年ごとのFAIの見通しを発表するのを停止し、代わりに中・長期のFAI目標額(80億~100Sドル)を設定している(2020年1月23日記事参照)。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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