オーストリア、ロシア産天然ガスの輸入割合が約7割に上昇

(オーストリア、ロシア)

ウィーン発

2023年02月13日

オーストリア通信(APA)は29日、オーストリアのロシア産天然ガスに対する依存度(20221114日付地域・分析レポート参照)が、2022年末に再び大幅に高まったと伝えた。気候行動・環境・エネルギー・モビリティ・イノベーション・技術省〔以下、気候行動・環境省(相)〕のエネルギーダッシュボードによれば、オーストリアの天然ガスの輸入に占めるロシア産天然ガスの割合は、20225月から10月にかけて20%弱まで徐々に低下したものの、11月には約40%に増加、12月には推定で約71%まで上昇しているとした。ちなみに、ロシアのウクライナ侵攻前は80%ほどだった。

割合が増加した主な理由としては、ドイツとイタリアからの輸入が減少したことと、2022年の夏の間にガス供給量を大幅に制限していたロシア国営ガス会社のガスプロムが、最近になって再び供給量を増やしたことにある。オーストリアのエネルギー大手OMVのアルフレッド・シュテルン最高経営責任者(CEO)は、ガスプロムからの供給量は、2022年夏の間は契約の30%、あるいはそれ以下になることもあったが、現在は100%納入されていると述べた。ウクライナ侵攻前はオーストリア同様、ロシア産天然ガスへの依存度が高かった隣国ドイツには現在、ガスプロムはガスを全く供給していない。

レオノーレ・ゲベッスラー気候行動・環境相は202327日、「ガスを節約すればするほど、次の冬に向けて十分な貯蔵量を保つことができる」と述べ、国民へ再び節電を呼びかけたばかりだ。同日時点で、オーストリアのガス貯蔵施設は74.9%の貯蔵量を保ち、2月初めとしては非常に高い値だ。

ウクライナ侵攻以降、ロシアからのガス輸入量を注視している野党ネオスが運営するシンクタンク「ネオス・ラボ」は、オーストリアの依存度が欧州の傾向と反して上昇している背景について説明している。同シンクタンクのディレクター、ルーカス・ススタラ氏は、オーストリアは、2022年の再生可能エネルギーによる発電量が2017年に比べて減少した数少ないEU加盟国の1つで、これは主に、2022年の干ばつの影響を受けた水力発電の減少が原因で、そのため、ガスによる発電量を増やさなければならなかったとしている。

(金子マヌエル)

(オーストリア、ロシア)

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