商務部など、外資の研究開発拠点設立に対する奨励措置を発表

(中国)

北京発

2023年02月01日

中国の商務部と科学技術部は1月18日、「外資による研究開発センター設立をさらに奨励する若干の措置外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(以下、措置)を発表した。措置では、外資研究開発センターを中国の科学技術イノベーションシステムを構成する重要な一部と位置付けた(注1)上で、(1)科学技術イノベーションの支援、(2)研究開発の利便性の向上、(3)海外人材誘致の奨励、(4)知的財産権保護水準の引き上げについて中央・地方政府各部門が行うべき16項目の取り組みと分担を示した(注2)。

(1)では、外資研究開発センターによる国の重大科学技術計画プロジェクトへの参加を奨励・支援するとした。具体的には、プロジェクト計画書の多言語対応の試行や、プロジェクト申請期限の適宜延長を行うとした。また、条件を満たす外資研究開発センターの専門家を国や地方の科学技術専門家人材データバンクに登録し、科学技術計画プロジェクトに関する審査や管理に参画させることも盛り込んだ。

(2)では、サイバーセキュリティー法、データセキュリティー法、個人情報保護法などの関連法規の要求を実施し、データ越境に関する安全管理を強化するとしつつ、重要データや個人情報の越境安全評価を効率的に実施し、研究開発データの安全で秩序ある自由な移動を促進するとした。技術の輸出入については、管理を最適化し、多国籍企業内部の技術の越境移転に便宜を図る案を検討するとした。このほか、国や省レベルの科学技術研究プロジェクト用に遺伝子組み換え生物や生物試料を導入する場合、バイオセキュリティーリスク評価を行った上で要件を満たすものについて検疫審査を円滑化すること、研究開発目的で一時輸入する重要設備や試験用車両について輸出期限を規定に基づき延長することも盛り込まれた。

(3)では、外資研究開発センターのチームに所属する外国籍メンバーに労働契約期間を超えない範囲の単発の工作許可や5年以内の工作類居留許可の申請を認めるほか、同じ多国籍企業本部が任命した外国籍高級管理職が省をまたいで勤務地を変更する際の工作許可の変更・再申請手続きを合理化するとした。

科学技術部によると、2021年の中国の一定規模以上の外商投資工業企業の研究開発人員は71万6,000人、研究開発支出は3,377億4,000万元(約6兆7,548億円、1元=約20円)となっている。また、同部は、特に北京市、上海市、広東・香港・マカオグレーターベイエリアにおいて外資研究開発センターの集積が加速していると指摘している(注3)。

(注1)記者会見した商務部の陳春江部長助理は、現在複数の要因によって中国における外資の導入は多くの課題に直面しているとの認識を示しつつ、2022年12月の中央経済工作会議において、「科学技術や人材の領域における国際的な協力の空間を広げ、世界的競争力のあるオープンなイノベーションエコシステムの形成に努め、ハイエンドなイノベーション人材を誘致・活用し、世界のイノベーション資源をより多く引きつける」とされたことに言及した。

(注2)商務部の陳部長助理は、今回の政策の策定過程で外資研究開発センターに調査を行ったところ、共通の要望として、外国籍人材の勤務環境の便利化、資金調達面でのサポート、政府プロジェクトへの参入機会の増加、知財権保護の強化などが挙がったと紹介した。

(注3)記者会見した科学技術部の担当者は、今後上述の3地域のほか、成渝地域(四川省成都市と重慶市を併せた地域)、湖北省武漢市、陝西省西安市などの地域においてより多くの外資研究開発センターが設立されるよう奨励し誘導していくとした。

(小宮昇平)

(中国)

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