2022年の農林水産物・食品輸出額は1.4兆円に拡大

(日本)

農林水産・食品市場開拓課

2023年02月03日

日本の農林水産省が2月3日に公表した「農林水産物輸出入情報」によると、財務省貿易統計に基づく2022年の農林水産物・食品輸出額(確報値)は、前年比14.3%増の1兆4,148億円(少額貨物輸出額767億円を含む)となった。アジアや米国で新型コロナウイルス感染対策の行動制限の緩和が進み、外食需要が回復したほか、円安が輸出を後押ししたとみられる。

輸出額上位3品目は、1位がアルコール飲料(1,392億円、前年比21.4%増)、2位はホタテ貝(生鮮・冷凍・冷蔵など)(911億円、42.4%増)、3位は牛肉(くず肉を含む)(520億円、4.0%減)となった。アルコール飲料については、中国や米国における日本産ウイスキーの根強い人気が輸出を牽引した。ホタテ貝は、主要産地である北海道での生産が順調だったことや、海外での需要の高まりにより、単価が上昇したことが輸出額の大幅な増加に寄与した。

一方、牛肉は、主要輸出国である米国向けが前年比10.9%減と減少した。牛肉の対米輸出については、日本やブラジルなど複数国枠を合わせた6万5,005トンが低関税枠の対象と定められている。干ばつの影響でオーストラリア産牛肉の対米輸出が減少し、ブラジルからの輸出が急増したことで、2022年3月末までに低関税枠が全量消化され、関税率が26.4%に引き上げられたことが響いた。

輸出額上位3カ国・地域は、1位が中国(2,783億円、前年比25.2%増)、2位は香港(2,086億円、4.8%減)、3位は米国(1,939億円、15.2%増)となった。その他、シンガポール(562億円、37,3%増)、フィリピン(314億円、51.6%増)、オーストラリア(292億円、27.1%増)向けが大幅に伸びた。中国では、新型コロナ禍でネットスーパーやライブコマース(注)など食品のEC(電子商取引)販売が拡大し、新型コロナウイルス感染対策の行動制限下でも食品小売りの需要は健在だった。その他のアジア各国や米国においては、行動制限が解除されて外食需要が回復したことや、円安効果で日本産食品の価格競争力が上がったことが、輸出に追い風となったとみられる。

他方、香港向け輸出については、2022年上半期にオミクロン株の感染拡大が深刻化したことにより、飲食店向けの厳しい営業規制が再導入されたため、アルコール飲料(前年比21.4%減の116億円)など外食向けの品目の需要が減少したことが響いた。

2022年は10月時点で輸出額が1兆円に到達するなど、前年を上回るペースで輸出が伸びた。2030年までに輸出額を5兆円とする目標に向け、日本政府は2022年12月に改定された輸出拡大実行戦略の中で、認定品目団体を中心としたオールジャパンによる輸出力強化や、錦鯉など海外で人気が高く、成長余地の大きい品目の輸出拡大に取り組むとしている。

(注)ライブコマースとは、ライブ配信で商品を紹介しながら、Eコマースで販売を促す手法。

(安東利華)

(日本)

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