欧州環境庁、リサイクル材市場の機能改善に向け政策提言

(EU、英国)

ブリュッセル発

2023年02月07日

欧州環境庁(EEA)は1月26日、欧州の二次資源(リサイクル材)市場に関する調査報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。対象はアルミニウム、紙、ガラス、木材、プラスチック、食品廃棄物、建設・解体廃棄物、繊維製品の8素材。

EEAは、アルミニウム、紙、ガラスの3市場では市場関係者に信頼できる情報が継続的に提供されており、国際的でオープン、リサイクル材は一次資源と比べて大きな市場シェアを持っているとして、十分に機能していると評価した。特にアルミニウムは、他の材料と比べて高いリサイクル率を既に達成しており、欧州では自動車と建物分野では90%以上、アルミ缶では75%に上っている。欧州のアルミニウム需要は、2018年の調査報告書によると、1人当たり250キログラムから2050年には450キログラムまで拡大するとみられており、拡大需要の半分はリサイクル材で賄われると見積もられている。

EEAは一方で、木材、プラスチック、食品廃棄物、建設・解体廃棄物、繊維製品のリサイクル材市場は、一次資源に比べて規模と需要が小さく、共通の仕様がないことなどを理由に、未発展な市場と結論付けた。

プラスチックのリサイクル率はEU加盟国と英国でばらつきがあり、2018年時点で平均して42%となっている。一方で、回収率とリサイクル率は、プラスチック製品となる前段階のポリマーの種類によって異なっており、同市場に関する正確な情報が欠如している点をEEAは指摘した。プラスチック廃棄物管理についても、リサイクル向けに回収されたプラスチック廃棄物と実際にリサイクルされたプラスチックの量が必ずしも整合しないなど、同市場には不透明な部分が多いとした。また、プラスチックの添加物などには有害物質が含まれている場合があり、リサイクルを困難にしているなど、高品質なリサイクルプラスチック材の生産を妨げている要因が複数挙げられた。

リサイクル材市場を改善させ、円滑に機能させることは、EUで循環型経済を実現するためのカギとして、EEAは市場改善に向け既存のEUレベルでの政策の拡大や変更も含めた取り組みが必要だとした。例えば、拡大生産者責任制度に環境調節(Eco-modulation)料を導入し、リサイクル可能な製品や資源をより多く上市することで、生産者が生産者責任組織への支払いを抑制できる仕組みの構築、グリーン公共調達の利用拡大、リサイクル目標の実効性向上もしくは対象とする廃棄物の拡大、廃棄物の終了基準(end of waste criteria、注)のさらなる整備などを提言した。さらに、EU域内で調和されたリサイクル材の技術基準を開発する、一次資源への課税やリサイクル材への付加価値税の引き下げを通じて、環境に与える負荷を考慮しつつ、一次資源とリサイクル材に公平な競争条件を設けるなど、適切な規制の整備も効果的だとした。

(注)特定の廃棄物がリサイクルなどを経て、一定条件を満たす場合に廃棄物とみなされなくなる(製品または二次資源となる)基準。EUでは廃棄物枠組み指令にその条件が規定されている。

(大中登紀子)

(EU、英国)

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