電力不足の影響大きく、政府は「国家的災害事態」を宣言

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2023年02月15日

南アフリカ共和国のシリル・ラマポーザ大統領は2月9日、長引く電力不足(2023年1月30日記事参照)によって発生しているさまざまな問題に対処するため、「国家的災害事態」を宣言した。過去、同宣言は2020年の新型コロナウイルスの感染拡大時期や、2022年4月の洪水による大規模水害が発生した際に出されている。

南ア国内では停電の影響で経済活動への影響が深刻化しており、政府は追加予算の投入、指揮系統を集約することで、迅速に問題解決に取り組みたい姿勢を見せた。今後、ラマポーザ大統領は新たに電力相を任命する。同大臣は、電力公社エスコムと協力して停電の解消に取り組み、国家エネルギー危機委員会の活動などに対して指揮・監督する責務を負う。問題解決のため、具体的に以下のような対策を講じていく予定だ。

  • 発電機やソーラーパネルなどを提供し、食料生産や倉庫業、小売業のサプライチェーンに関わる事業者を支援。
  • 病院や浄水場などの市民生活に重要なインフラ施設を計画停電地域から外す。
  • 環境問題などに配慮しながら、エネルギー事業を加速させ規制要件を緩和する。

また、ラマポーザ大統領は演説で、この災害への対応に必要な資金の乱用を防ぐため、会計検査員を投入すると述べた。

最大野党の民主同盟(DA)や経済界などは、今回の政府の宣言に対して否定的な反応だ。DAは、議会の承認プロセスなしに特定の大臣に権限が集中することは、無意味な規制交付の可能性を高め、汚職の温床となりえるとして反対した。また、南アを代表する経済団体である南ア経済団体連合会(BUSA)やビジネス・リーダーシップ・サウスアフリカ(BLSA)も、一部施策に期待するとしつつも、新型コロナ感染拡大時の宣言下で汚職がまん延したことを例に挙げ、今回も腐敗を生む可能性があると懸念を示している。

(堀内千浪)

(南アフリカ共和国)

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