電力不足が深刻化、計画停電は今後も続く見通し
(南アフリカ共和国)
ヨハネスブルク発
2023年01月30日
南アフリカ共和国では、電力不足が深刻化しており、2022年から計画停電が頻発している(2022年11月25日記事参照)。電力公社エスコムは1月11日、11カ所の発電所が故障したことなどもあり、計画停電のステージ6(注1)を無期限に継続すると発表した。ただ、23日からはステージ4に引き下げ、段階的にステージの引き下げを行っている。
エスコムは22日付の声明で、昨今の停電の原因として、2022年10月のクシレ発電所の故障によって2,000メガワット(MW)の発電量が失われたことを挙げた。また、一般的な発電所の寿命が50年とされる中、各発電所の平均稼働期間が45年になっている点も指摘。電力需要に対して現在4,000~6,000MW分が不足しているが、今後、経年劣化が進むと発電能力が落ち、供給量はさらに落ち込むとの見解を示した。エスコムのムポ・マクワナ会長は、南ア全体のエネルギー需要の少なくとも80%を供給する石炭火力発電の回復に重点を置いているが、需要に見合った電力供給が実現するには最低でも2年かかると推定する。その期間はステージ2~3程度の計画停電が続くとみられる。
一方、エスコムは各発電所のメンテナンス実施に尽力しているとし、設備容量の約11%に及ぶ6,022MW分のメンテナンスを計画していることを明らかにした。また、9,200MWを超える供給が見込まれる各種プロジェクトが進行中であることにも言及し、今後これらのプロジェクトが稼働すれば、電力不足は緩和されるだろうとの見解を示した。
なお、1月12日に、国家エネルギー規制局(NERSA)がエスコムから申請のあった電力料金値上げ要求を受諾した。4月1日から18.65%の値上げが予定されている。これについては、シリル・ラマポーザ大統領や与党の一部が値上げを見送るよう要請しているが、電気料金の設定にNERSAの役割は大きく、裁判所を通してのみ異議申し立てが可能だ。
ヨハネスブルク市とケープタウン市は懸念表明
ヨハネスブルク市とケープタウン市は1月11日、計画停電の延長についてそれぞれ声明を発表。両市は今後、市民生活の基盤となる上下水道や交通サービスの安定供給が脅かされると懸念を表明した上で、電力不足の一因となっている電線窃盗の防止や警察への通報への協力を呼び掛けている(注2)。
(注1)南アの計画停電はステージ1から8まである。ステージ6は最大6,000メガワット(MW)の電力削減を求める逼迫状況で、具体的には、1回4時間半の停電が4日間で最大18回行われる。
(注2)停電時間が長くなるほど電線窃盗は増える傾向にあるとされる。
(新田菜穂子)
(南アフリカ共和国)
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