経済的・地政学的課題の懸念高まる、ASEAN識者などへの調査

(ASEAN、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、フィリピン、マレーシア、ミャンマー、シンガポール、タイ、ベトナム)

シンガポール発

2023年02月14日

シンガポールのシンクタンク、ISEASユソフ・イシャク研究所〔旧・東南アジア研究所(ISEAS)、以下ISEAS〕は2月9日、ASEAN加盟10カ国の識者などを対象に実施した調査「The State of Southeast Asia:2023 Survey Report」を公表した。同調査によると、東南アジアで経済的に最も影響力が大きい国・地域機関では、「中国」(2021年:75.9%→2022年:76.7%→2023年:59.9%)を挙げる割合が最も高かった。「ASEAN」(10.1%→7.6%→15.0%)、「米国」(6.6%→9.8%→10.5%)、「日本」(4.1%→2.6%→4.6%)が続く。

また、政治・戦略的影響力でも、「中国」(49.8%→54.4%→41.5%)と回答する割合が最も高く、「米国」(28.5%→29.7%→31.9%)、「ASEAN」(15.2%→11.2%→13.1%)、「EU」(1.7%→0.8%→4.9%)、「オーストラリア」(0.5%→0.8%→3.0%)、「日本」(3.5%→1.4%→1.9%)が続く。ISEASはメディアリリースにおいて、「2022年と比較して差は縮まったものの、米国を大きく上回り、中国は依然として影響力のある経済大国で、政治・戦略的にも最も影響力がある」とした。

東南アジアが直面している上位3つの課題(複数回答)では、「失業と景気後退」(59.5%)の回答割合が最も高かった(注)。「気候変動とより激しい・頻繁な気象現象」(57.1%)、「社会経済的格差・所得格差拡大」「潜在的な紛争地域から引き起こされる軍事的緊張の高まり」(いずれも41.9%)などが続いた。

ISEASのチョイ・シン・クウォック所長は今回の結果について、「短中期的に地域の利益に悪影響を及ぼす可能性のある経済的・地政学的問題に対する地域の懸念が高まっていることを反映した」と述べた。また、「(東南アジア)地域は、米国と中国が建設的な役割を果たすことに引き続きオープン、かつ他の大国を歓迎している一方で、ASEAN自身が、より厳しい環境の中で自らの将来を方向付けるために、より大きな力を発揮できることを軽視していないことを示している」とした。

同調査はISEASが毎年実施しているもので、今回で5回目。今回発表された最新の調査は、ASEAN加盟10カ国の学術界・シンクタンク・研究機関、産業、政府、市民社会組織・メディア、地域・国際機関の関係者などを対象に、1,308人から回答があった。調査期間は、2022年11月14日から2023年1月6日まで。調査結果はISEASのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで閲覧できる。

(注)選択肢のうちから3つを選択。

(朝倉啓介)

(ASEAN、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、フィリピン、マレーシア、ミャンマー、シンガポール、タイ、ベトナム)

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