2023年の世界経済成長率を0.2ポイント上方修正、IMF見通し

(世界)

国際経済課

2023年02月01日

IMFは1月30日、最新の「世界経済見通し」(英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます日本語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。世界の経済成長率(実質GDP伸び率)は2022年に3.4%、2023年には2.9%へ鈍化し、2024年には3.1%に回復すると予測。前回(2022年10月)の予測と比較して、2023年の見通しを0.2ポイント上方修正した(添付資料表参照)。IMFのチーフエコノミスト、ピエール・オリビエ・グランシャ氏は上方修正について、労働市場の力強さや、家計消費と設備投資の底堅さ、エネルギー危機に対する欧州の適応力、さらにはインフレの改善(後述)などを背景に、「前年第3四半期(7~9月)の経済成長が予想外の底堅さを示した」ことを理由に挙げる。また、中国による突然の社会活動制限の緩和で、経済活動が急速に回復する道筋がついた要因も大きいと指摘した。

2023年の経済成長率を地域別にみると、新興・途上国・地域では4.0%と、前年から緩やかな上昇がみられるが、先進国・地域では1.2%に大幅に減速し、明暗が分かれた。IMFは、2023年の経済成長は中国とインドが牽引し、両国で世界経済成長の半分を占めると指摘した。中国では、成長鈍化の要因となっていたゼロコロナ政策による規制が2022年11月から緩和されはじめたことから、急速な経済活動の再開により、5.2%へ回復。インドは底堅い内需が下支えし、6.1%と高い経済成長を維持する見通し。

対して、先進国・地域の成長率の低さは、インフレ抑制を目的とした金利上昇とロシアによるウクライナ侵攻の影響が起因すると分析する。米国(1.4%)は、米国連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが影響して減速の予測。ただし、2022年に労働市場の改善と底堅い内需により予想より高い成長を維持したことを反映して、前回から0.4ポイントの上方修正となった。ユーロ圏(0.7%)は、エネルギー価格の下落や政府の財政支援による相殺効果で、前回から0.2ポイントの上方修正となった。

世界のインフレ率は、各国の金融政策の引き締めによりインフレ抑制の兆しがみられ、2022年に8.8%とピークに達し、2023年は6.6%、2024年は4.3%と鈍化する。2023年は約84%の国・地域で2022年より低くなる見通しだ。ただし、依然として新型コロナウイルスのパンデミック前の水準より高く、ディスインフレーション(注)には時間がかかるとした。

今後の下振れリスクとしては、中国の新型コロナウイルス感染状況の悪化、インフレ率の高止まりによる金融政策のさらなる引き締め、ロシアによるウクライナ侵攻の激化によるエネルギーと食料市場の不安定化などを挙げた。

(注)物価上昇率が低くなり、インフレーションの進行が抑えられている状態。

(田中麻理)

(世界)

ビジネス短信 768639080d5f13b5