テキーラ生産量が新型コロナ禍前と比べて倍増、米国セレブ・ブランドも増加

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2023年02月21日

テキーラ規制評議会(略称:CRT)の統計によると、テキーラの生産量は急増しており、パンデミック前の数年間は足踏み状態だった生産量は増加に転じ、2022年の生産量は2019年比で約1.9倍に増加した(添付資料図1参照)。

テキーラの原料となるアガベ(リュウゼツラン科の多肉植物)の生産者も2022年末時点で3万6,000件を超え、2020年の1万8,487件から倍増した(「エル・フィナンシエロ」紙2月14日)。

メキシコ国内で生産されるテキーラの約61%は世界120カ国に輸出されている。輸出量も右肩上がりで(添付資料図2参照)、2022年の輸出量は4億リットルを超え、2019年と比較し約1.7倍になっている。2022年は、「テキーラ(注)」の輸出量が約1億5,000万リットルのところ、「アガベ100%テキーラ(注)」の輸出量は2億6,000万リットルを超える。「アガベ100%テキーラ」の中でも最も大きい輸出量を占めるのが、樽(たる)熟成しておらず甘味料や着色料も入っていない「テキーラ・ブランコ(シルバーテキーラ)」だ。

セレブたちが造るテキーラも生産量の5%を占める

米国のプロバスケットボール選手や米国の大人気シンガーソングライターが、自身でテキーラのブランドを立ち上げるケースも増加している。メキシコではこれらセレブのブランドで扱うテキーラが、メキシコのテキーラ生産量の5%を占めている。CRTのラモン・ゴンサレス・フィゲロア代表は「彼らも自社ブランドの商品を『テキーラ』と名乗るにはメキシコの規制を順守しなければならない。メキシコ産のアガベを購入し、メキシコのテキーラ工場での雇用を生み出し、税金を納めながら、メキシコがこれまでリーチできていなかった国々での売り上げを生み出している。テキーラ業界にとっては成功といってよいだろう」と述べた(「エル・フィナンシエロ」紙2月14日)。

(注)メキシコ資産産業促進省が1977年に出した「『テキーラ』の原産地呼称を保護する宣言(以下、宣言)」に基づき、「テキーラ」と「アガベ100%テキーラ」は下記の定義を満たさなければ名乗ることができない。本記事では、かぎかっこのついていないテキーラは「テキーラ」と「アガベ100%テキーラ」の両方を指すものとして記載している。

  • 「アガベ100%テキーラ」:宣言において定められた地域内で生産されたブルーアガベ(正式名称:アガベ・テキラナ・ウェベル・バリエダ・アスル)のみを使って製造されるテキーラのこと。同地域内に位置し、登録生産者の管理下に置かれた工場で瓶詰めされなければならない。
  • 「テキーラ」:原料のうち51%以上にブルーアガベを使用したテキーラのこと。49%まではアガベ由来でない糖分で発酵を補糖することができるとされている(蒸留後にブルーアガベ以外のスピリッツを足すことはできない)。宣言において定められた地域内に位置する工場か、地域外の場合はメキシコ公式規格(NOM-006-SCFI-2012)の要件を満たした工場で瓶詰めされなければならない。

(渡邊千尋)

(メキシコ、米国)

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