タイプラスワンとしてのカンボジア国境活用セミナー開催

(カンボジア)

プノンペン発

2023年02月02日

ジェトロは、カンボジア開発評議会(CDC)とともに、タイ・バンコク市内のホテルにおいて「タイプラスワンとしてのカンボジア国境活用セミナー」を1月20日に開催した。カンボジアからソク・チェンダ・ソピア首相補佐特命相兼CDC事務局長をはじめ、ロイヤルグループ・ポイペト経済特区、豊田通商グループテクノパークポイペト経済特区の代表が渡航して講演を行った。また、バンコクに拠点を有する海外産業人材育成協会(AOTS)、国際協力機構(JICA)の代表が人材育成および投融資の企業支援制度を紹介した。会場およびオンラインを合わせ、セミナーには158人が参加した。

バンコクから、カンボジア国境のポイペトまでは車で4時間程度。カンボジア側の国境地域ではタイの通貨バーツが流通しているほか、工場作業員であってもタイ語を話すことができる人が多い。そのため、タイ人によるマネジメントや技術指導もしやすい。2022年度海外進出日系企業実態調査によると、製造業作業員の1人当たり人件費(諸費用を含む)は、タイで月額633ドルなのに対し、カンボジアではその半分以下の295ドルだ。タイでは人件費が高止まりし、若い労働力の減少への懸念もある。その打開策として、タイプラスワンの生産拠点をカンボジアに設けることも選択肢となり得る。加えて、新国境ゲートの建設が進んでおり、インフラ開発による利便性向上も期待されている(注1)。

ソク・チェンダ・ソピア首相補佐特命相は「カンボジアは発展著しいタイの大都市バンコクとベトナムの中継地点に位置する。タイプラスワンで進出し、カンボジアでたくさん稼いでもらいたい」とあいさつした。CDC担当官からは、タイプラスワンと親和性が高い「カンボジアの自動車・電気電子部品産業ロードマップ」を紹介したほか、適格投資案件(QIP)認定企業への税制優遇制度として、最長9年間の法人税免税、およびその後6年間の段階的な減税措置など、投資法の内容について説明があった。

ロイヤルグループ・プノンペン経済特区の上松裕士最高経営責任者(CEO、注2)は、物流の円滑化策として、同グループが開発を担う鉄道輸送の利便性向上、通関を含む輸送コストの大幅削減を実現する自社サービスを紹介した。テクノパークポイペトの杉田直人マネージングダイレクターからは、製造に集中するために必要な周辺業務(人事、総務、経理、給食など)を担うサービスの紹介があった。

2023年はカンボジア・日本の友好70周年の年であるとともに、ASEAN・日本の友好50周年の年でもある。カンボジアと日本の2国間だけではなくASEAN域内からの日系企業のカンボジア進出の促進など、ビジネス面でさまざまなかたちでの関係構築が期待されている。

写真 タイのアラヤプラテートと、カンボジアのストゥンボット国境をつなぐ新国境ゲート(カンボジア側)の建設状況の様子(2022年12月、ジェトロ撮影)

タイのアラヤプラテートと、カンボジアのストゥンボット国境をつなぐ新国境ゲート(カンボジア側)の建設状況の様子(2022年12月、ジェトロ撮影)

(注1)施工業者へのヒアリング(2022年12月)によると、タイのアラヤプラテートとカンボジアのストゥンボット国境をつなぐ新国境ゲートは建設中で、8割程度の工事が完了している。2023年5月竣工(しゅんこう)、6月オープニングを目指す。

(注2)上松氏は、ロイヤルグループ・プノンペン経済特区および同グループポイペト経済特区のCEO。なお、ロイヤルグループ・ポイペト経済特区は、ロイヤルグループプノンペン経済特区の子会社。

(春田麻里沙、ニティー・ヘン)

(カンボジア)

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