アダニ、不正疑惑で株価暴落、再エネ分野出資見送りも

(インド)

アーメダバード発

2023年02月21日

インドの新興財閥アダニ・グループ(Adani Group)が不正会計の疑惑を指摘され、株価が大幅に下落している。米国の投資調査会社ヒンデンブルグ・リサーチは1月24日、同グループ各社がタックスヘイブンや子会社を通じた資金操作により、過去何年にもわたって不正会計や株価操作、マネーロンダリングなどを行っていたとする報告書を公表した(「ヒンデンブルグ・リサーチによる報告書」1月24日)。

これに対してアダニ・グループは翌25日から複数回にわたり、報告書の内容は事実とは異なり、全く根拠のないものと否定する声明を発表したものの、事態は収束せず、同グループの中核企業のアダニ・エンタープライズ(Adani Enterprise)の株価は1月24日時点の3,442.00ルピー(約5,507円、1ルピ=約1.6円)から、2月2日には1,565.25ルピーまで大幅に下落した。2月20日現在では、1,620ルピー前後を推移している。

報告書の発表以降、グループ全体で消失した時価総額は1,000億ドル以上に上った。また、同グループは2月1日、最大2,000億ルピーの公募増資を撤回し、調達した額は投資家に払い戻すことを発表。資金調達は状況が安定するのを待って再検討するとしている(「タイムズ・オブ・インディア」紙2月2日)。

アダニ・グループ創設者のゴータム・アダニ会長は、ナレンドラ・モディ首相と同じ西部グジャラート州の出身で、モディ氏がグジャラート州首相だったころから20年以上にわたって、密接な関係を築いているとされている。今回の同グループの不正疑惑を受け、インド野党からはモディ首相への非難が強まっている。一方で、2月5日までの世論調査によると、回答者の約半数がモディ政権に「非常に満足している」とし、約30%が「ある程度満足している」と回答しており、支持率は2022年11月以降、横ばいで推移している(「エコノミック・タイムズ」紙2月10日)。

また、フランスのエネルギー大手トタルエナジーズ(Total Energies)は2022年6月、インドでのグリーン水素の製造・商業化に向けて、アダニ・ニュー・インダストリーズ(Adani New Industries)の株式25%を取得する契約を締結していたが、不正疑惑が解消されるまでは出資を見送ることを明らかにしている(「ミント」紙2月15日)。

(飯田覚)

(インド)

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