EU、廃棄物から水素を生産するドイツのRWEのプロジェクトに1億800万ユーロ出資

(ドイツ、オランダ)

デュッセルドルフ発

2023年02月17日

ドイツのエネルギー大手RWE119日、EUイノベーション基金から1億800万ユーロ出資を受けると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。出資を受けるのはオランダ・リンブルフ州で実施される、リサイクルできない都市廃棄物(都市生活ごみ)からグリーン水素を生産するプロジェクト「FUREC」。生産する水素は化学産業での消費が予定される。同プロジェクトは、化学産業での二酸化炭素(CO2)排出量を水素の利用によって削減すると同時に、原料の生産過程をいっそう持続可能にするもの。「循環型経済」の好事例だ。

同プロジェクトは具体的に、年間で約70万トンの都市廃棄物(約200万人分の年間の廃棄物に相当)をまず、廃棄物処理施設で分別、乾燥して、燃料ペレットにする。次に、リンブルフ州の化学クラスターのケメロット工業区に輸送し、その後、同工業区に建設予定のRWEの工場で水素に変換する。同工場では水素を年間54,000トン生産する見込みで、これは700メガワットの洋上風力発電所と電解槽による水素生産能力に相当する。水素の利用により、ケメロット工業区は天然ガス消費量を年間28,000万立方メートル以上削減し、その結果、年間で約40万トンのCO2を削減できる。水素の生産過程で排出されるCO2は回収、貯留されるほか、将来的には産業界で原料としての利用の可能性もある。さらに、革新的なペレット化技術により、従来の廃棄物処理で回収できなかった鉄・非鉄金属、ガラス、石材の回収ができるようになる。

生産された水素はオランダ化学肥料大手OCIのアンモニア工場などに供給される予定だ。水素の供給に必要なインフラ整備も今回のプロジェクトの枠組みで進めている。

稼働開始は20285月の予定。EUイノベーション基金からの出資が決まり、RWEは必要な承認や許可の取得を含め、プロジェクト開発を推進しているところだ。同時に建設予定の工場の建設資材サプライヤーや水素とCO2の潜在的な顧客、適切な量や質の廃棄物を提供できる企業との契約締結を始めている。最終的な投資判断は2024年に行われる予定だ。なお、プロジェクトの完成には68,500万ユーロの投資が必要となる。RWEは同プロジェクトについて、オランダや他の欧州諸国における同様の事業展開の青写真と見なしている。

なお、今回の出資したEUイノベーション基金は、EU排出量取引制度(EU ETS)を100%財源としている(202079日記事参照)。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ、オランダ)

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