VW、電気自動車を活用した再エネ充電の実証実験を成功裏に終了

(ドイツ)

ミュンヘン発

2023年02月16日

ドイツ自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)は123日、子会社でバッテリー式電気自動車(BEV)の充電などを手掛けるエリ(Elli)が地域配電事業者と協力して行った、BEV充電に関する実証実験の結果を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同実証実験は20226月に開始が発表されたもの(2022年7月6日記事参照)。

実証実験は202279月に実施し、VWの電気自動車「ID.3」「ID.4」「ID.5」のオーナー約20人が参加した。参加者はエリのスマート充電アプリを使い、私設の充電器からBEVに充電した。アルゴリズム・ソフトウエアを使い、再エネ発電量予測に基づき電力料金を変動させ、再エネ発電量が増加し系統負荷が見込まれる時間帯にBEV充電が行われるよう仕向けた。

実験の結果、BEVへの充電タイミングを調整することで系統混雑が抑えられ、その結果、約3割の二酸化炭素(CO2)排出量を削減できることがわかった。これにより、地元の再生可能エネルギー由来の電力をより多く充電に使用できることになる。VWによると、系統混雑を防ぐため、2021年にドイツ国内で約6,000ギガワット時の再エネ発電制御があった。これは、約240万台のBEVが年間走行できる電力量に相当する。実験期間中、電力系統に負荷が生じることはなく、この充電タイミング調整で、5倍のBEVが充電できたという。

BEV利用者にとってもメリットが生じた。具体的には、4割以上の実験参加者が年間電気料金に換算した電気料金を削減できた。年換算では、最大70ユーロ以上の削減になったケースもあったという。また、実験参加者は系統混雑に応じて充電タイミングを変更することにも柔軟だった。実験参加者の8割以上がプロジェクトの続行に賛成するなど、満足度も高かった。エリのニクラス・シルマー副社長(戦略担当)は今回の実証実験について、BEVを活用した電力需給バランス確保策への重要な第一歩だ、とコメントしている。

電力系統とBEVの実証実験は、電力会社側でも行われている。例えば、ドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク州に本社があるエネルギー会社EnBWの地域配電子会社ネッツェBWNetze BW)は2018年から同州8カ所で、BEV充電の傾向と系統負荷などを調査する実証を、113世帯が参加して実施外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。この実験から、(1BEVの充電が重なる時間帯は地域によって異なるものの、夕方に充電されることが多い、(2)一方で、BEVは充電に必要な時間よりも長く充電器につながれたままになっている、(3)よって、電力需要の負荷平準化に向けてできることの余地は大きい、などの結論が得られている。

(高塚一)

(ドイツ)

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