米上院民主党、バイデン政権にインド太平洋での外交強化を要請、中国に対抗

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年02月13日

米国連邦議会上院の外交委員会に所属する民主党議員は29日、インド太平洋地域における米国の外交強化を求める報告書を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。報告書では、外交や開発援助に関わる米政府機関のインド太平洋地域での取り組みを検証し、バイデン政権のインド太平洋戦略(IPS2022年2月14日記事参照)の目的達成に向けた提言をまとめている。

報告書では、世界の経済的・戦略的重心がインド太平洋地域に移り、米国にとっての重要性が増すととともに、同地域での中国の経済力や軍事力の台頭が米国の国益に対する重大な挑戦になっているとの現状認識を示した。バイデン政権が20222月に発表したIPSについては、これまでの民主、共和両政権と同様の見方に基づいて、インド太平洋の重要性の高まりと中国の影響力の拡大を認識していると評価した。その上で、IPSの実現のための主要な提言として、十分な資源の確保、議会との連携、経済統合の推進、民主主義と人権の促進、安全保障と非安全保障に関わる取り組みを通じた抑止力の強化、広報文化外交と人的つながりへの投資拡大、優先度に応じた戦略的開発投資、同盟・パートナー国への関与の深化を挙げた。

これらの提言のうち、IPSのための資源に関しては、開発援助を含むインド太平洋地域向けの予算不足を指摘した。議会が十分な予算措置を講じるために、政権に対しIPSの実行計画とそれに必要な予算の詳細や優先順位を提示するよう要請した。

経済統合の推進を巡っては、IPSの成功のために中身のある行動志向の経済アジェンダが必要と訴えた。具体的には、米国主導の経済圏構想であるインド太平洋経済枠組み(IPEF)が、米国による地域の経済統合への長期的なコミットメントを示すようなかたちで策定され、米国の民間部門とIPEFのパートナー国にとって安定性と信頼性のある枠組みになるよう求めた。そのために政権は、IPEFの交渉範囲や議会承認、実施に関して議会と共通理解を持つ必要があると記した。議会では、上下各院の通商を所管する委員会からもIPEFの交渉過程での議会との緊密な連携を求める声が出ている(2022年12月22日記事参照)。そのほか、台湾との通商協議(2023年1月18日記事参照)に優先的に取り組み、台湾の将来的なIPEF参加の可能性を排除しないよう促した。

上院外交委のボブ・メネンデス委員長(民主党、ニュージャージー州)はプレスリリースで「もしわれわれが、アジアでの米国の国益の促進と中国との競争に真剣であるならば、野心的な政策に野心的な資源を一致させる必要がある」と述べ、政権に外交に投じる政治資源を拡充するよう呼び掛けた。また、同委員長は報告書の発表と同日に行われた対中政策に関する外交委の公聴会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでも、出席したウィンディ・シャーマン国務副長官に対し、中国との競争を念頭に外交にかける人的資源などを増やす必要性を直接説いた。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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