米消費者の7割超がオンライン消費増加見通し、インフレ下でより得な購入求める、民間調査
(米国、フランス)
ニューヨーク発
2023年02月06日
米国では、インフレや経済的不確実性が高まっていることから、消費者の間で価格への意識が強まり、よりお得な購入を求めてオンライン消費が増加する傾向が高まっていることが、民間調査からわかった。
マーケットプレイス構築に向けたSaaS(サービス・アズ・ア・ソフトウエア)プラットフォームを手掛けるフランスのミラクル(Mirakl)は1月31日、「デジタルファースト経済における消費嗜好(しこう)」に関する年次報告書の調査結果を公表した。同調査は、米国の独立系調査会社のシュレジンジャー・グループが2022年10月に実施したもので、米国を含む世界各国(注)における9,600人の消費者を対象に、実店舗およびオンライン販売の双方における消費嗜好や習慣について調査した。
これによると、高インフレが続く中、米国の回答者の大半(86%)が、買い物をする際に価格に対して価値の高い商品を求めるようになったと回答した。インフレ対策の1つとして、71%の回答者がよりお得な商品を求めて、今後1年間の間に電子商取引(EC)への支出を増やす見込みとしている。また、米国の回答者の半数以上(53%)が、過去6カ月間に必要な商品が店頭で在庫切れになる頻度が高くなったと回答した。世界的にみても、消費者の間ではオンライン上の方が商品を入手しやすいといった認識や、ECサイトへの信頼性が高まったことが、オンラインへの長期的なシフトを促す要因の1つになっているとしている。
ミラクルの共同創業者兼共同最高経営責任者(co-CEO)のアドリアン・ヌッセンバウム氏は「消費者が価格と利便性にあらためて注目していること、そして価格が高騰する中で、お気に入りのブランドに無条件に忠実な顧客はごく一部に過ぎないことを明確に示している」と指摘している。
米国では、2022年の年末商戦でも、小売り各社が過剰在庫を削減するために大幅な値引きを実施し、特にECサイトでは、玩具や電化製品などのカテゴリーで過去最高の値引きが実施されたことが、インフレ下で価格に敏感な消費者を引き付けた(2023年1月24日記事参照)。
米国のデジタル市場では、2022年の米国のEC売上高が前年比11%増の1兆900億ドルに達し、初めて1兆ドルを突破した。商材別にみると、食料品の売上高が2,190億ドルと最大で、アパレル・アクセサリー(1,750億ドル)、コンピュータ・周辺機器(1,177億ドル)と続いた。また、売上高の増加に寄与したのはスマートフォンやタブレットなどを介したモバイルコマースで、2022年第4四半期(10~12月)には、オンライン売上高に占めるモバイルの割合は、過去最高の38%(1,275億ドル)に達した。同四半期のモバイルコマースの成長率は、デスクトップ経由の取引の2倍の成長率を記録している(業界専門誌「チェーン・ストア・エイジ」2023年1月30日)。
上述のとおり、インフレへの対策や利便性の高まりを理由としてEC利用が増えることに加え、オンライン消費の中でもモバイルコマースの利用頻度が増加傾向にある。米国経済の先行きにも不確実性が高まっていることから、消費者の間ではお値打ち感を求める動きが続くとみられ、今後もオンライン全体におけるモバイルコマースの普及拡大が注目される。
(注)調査対象国は、オーストラリア、ブラジル、デンマーク、ドイツ、イタリア、日本、オランダ、ノルウェー、ポーランド、シンガポール、スペイン、トルコ、英国、米国。
(樫葉さくら)
(米国、フランス)
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