ベネズエラ首都カラカス東部でバブルの様相、高所得者向け商業・サービス施設の開店相次ぐ

(ベネズエラ)

ボゴタ発

2023年02月10日

ベネズエラのカラカス首都区東部にあるバルータ市、チャカオ市はもともと高所得者向けの店舗やレストランが立ち並ぶエリアだったが、事実上のドル経済が定着したことからこの2年程度で特に商業・サービス施設への投資が進み、新規・新装開店が目立つバブルの様相となっている。

バルータ市のラス・メルセデス地区では、オフィスビルのほか高級ショップやカジノ、輸入車ショールームなどが次々と誕生している。2022年にオープンした「アバンティ」はグッチやディオールなどのファッションブランドやコスメティック商品を販売する。2021年にはイタリア製高級車フェラーリのショールームもオープンした。チャカオ市のロス・パロス・グランデス地区では、202212月末に「ハードロックカフェ」が1,520平方メートルの新店舗で突如オープンし、話題を呼んでいる。市内のショッピングセンターにあった同店舗が2020年に閉鎖され、撤退したとみられていたが、規模を拡大して再開したもので、ベネズエラの民間企業によるフランテャイズとみられている。また、アルタミラ地区につい最近オープンした「アルトゥム」は、天空のディナーをコンセプトとするレストランで、クレーンで高さ50メートルまで釣り上げられた25席のテーブルで1時間程度の食事を提供するというもの。食事の価格は、飲み物込みで1180ドル程度だ。

ラス・メルセデス地区でみられるような投資・消費ブームについて、コンサルタント会社ダタナリシスのビセンテ・レオン氏はBBCニュースのインタビューで、「数十年も前から国民がもともと保持していた資金に加え、経済制裁による資産凍結を避けるために使われる資金、制裁対象の政府と関係が深く国外で支出ができなくなった経営者や政治家の資金、さらには汚職によるものも混ざっている」と指摘する。また、1999年のチャベス政権の成立以来、資産を海外に移していた富裕層が、経済危機の終焉(しゅうえん)を見込んで資産の一部を本国に送金し、不動産投資を行うといった例は頻繁にみられるようになった。

アンドレス・ベージョ・カトリカ大学が202211月に公表した生活実態調査(ENCOVI)によると、ベネズエラの経済的貧困率は2019年の69%から2022年には58%まで減少した。一方で、所得格差を示すジニ係数は逆に2019年の0.495から2022年に0.603と拡大し、その格差は中南米最大のみならずナミビア、モザンビーク、アンゴラと同等と結論付けた。さらに、所得で10階層に分けた場合、最高・最低層の格差は約70倍となり、ベネズエラの人口の17%が住むカラカス首都圏に最高所得層の40%が集中するとしている。前出のダタナリシスは、富裕層人口は全体の約2%、上位中間層は4%と発表している。

こうした極端な所得格差から「ベネズエラ国内に2つのベネズエラがある」ともいわれ、大半の国民にとってラス・メルセデスのような地域での消費活動は現実的ではない。ただし、全体の6%とされる富裕層・上位中間層として約170万人が存在し、活発な消費が行われている市場であることも、また見過ごせない一面といえる。

写真 天空のディナーがテーマのレストラン「アルトゥム」(ジェトロ撮影)

天空のディナーがテーマのレストラン「アルトゥム」(ジェトロ撮影)

(マガリ・ヨネクラ、豊田哲也)

(ベネズエラ)

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