米原子力規制委員会、小型モジュール式原子炉発電所の設計を初認定

(米国)

ニューヨーク発

2023年01月24日

米国エネルギー省(DOE)は1月20日、米国原子力規制委員会(NRC)がニュースケール・パワー(本社:オレゴン州ポートランド)の小型モジュール式原子炉(SMR)発電所の設計を標準設計の1つに認定したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同形式の発電所としては初めての設計認定となる。今後、電力会社は新規原子力発電所の建設や運転の認可を申請する際、ニュースケールのSMR発電所を選択することが可能になる。

国際原子力機関(IAEA)によると、SMRとは、1基当たりの発電電力量が最大300メガワット(MW)程度で、従来の原子炉と比べて出力が約3分の1と小さい先進的な原子炉を指す。一般に従来の原子炉と比べて設計が単純で安全性が高いとされるほか、「小型」「モジュール式」の文字どおり、物理的な大きさでも従来の原子炉の数分の1という小型のため、システムや部品などを工場で組み立てた後、ユニット一式(モジュール)として設置場所に輸送することが可能だ。そのため、大型の原子力発電所には適さない場所への設置が見込まれるほか、建設期間や建設コストの低減が見込まれる。原子力発電は発電時に温室効果ガス(GHG)を排出しないことに加え、SMRは上述のとおり安全性、立地・利用の柔軟性に優れることなどから、次世代のエネルギー源として注目されている。

DOEによると、今回設計認定されたニュースケールのSMR発電所は、1基当たり大規模原子炉の約3分の1となる50MWの電力を発電可能な小型原子炉12基を最大収容するもの。現在、アイダホ国立研究所で原子炉6基を収容した同設計発電所の実証が行われており、最初の原子炉は2029年までに稼働し、2030年までに全基をフル稼働させる予定だとしている。また、同社は各原子炉について最大77MWの電力を発電可能にするための改良設計も申請しているとして、NRCが2023年中にも審査を開始するだろうと述べている。

SMR開発は国際的にも導入に向けた動きが加速しており、2022年10月には日米両国で小型モジュール式原子炉の導入でガーナと提携することが合意されていた(2022年10月28日記事参照)。

一方で、その本格的な普及には懸念も残る。折からの世界的な高インフレを受けて、ニュースケールは1MWh当たりの目標電力価格を、当初の58ドルから89ドルに今月大幅に引き上げた(ロイター1月20日)。また、エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)は、同価格は最終的に102ドルになると試算しており、SMRが安価なエネルギー源とする考え方は弱められていると主張している。安価かつ低炭素な電力源という特徴が両立し得るのか、引き続き小型モジュール式原子炉の開発動向に注目が集まる。

(宮野慶太)

(米国)

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