ECDC、「XBB.1.5」の早期流行の可能性はないとの見解、中国からの渡航者対応指針も発表

(EU、中国)

ブリュッセル発

2023年01月12日

EUの専門機関である欧州疫病予防管理センター(ECDC)は1月9日、従来の変異株より感染力が高く、米国などで感染が急速に拡大しているオミクロン株派生型「XBB.1.5」に関する見解を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。この変異株は、欧州経済領域(EEA、注)でも新型コロナウイルスの感染者数を増加させる可能性があるものの、現時点ではEEA内での検出率は非常に低いことから、2月中は、この変異株による感染拡大はないとしている。

ECDCによると、XBB.1.5の報告例は、1月9日時点で米国に集中している。EEAでは、オーストリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、フランス、ドイツ、アイスランド、アイルランド、イタリア、オランダ、ポルトガル、ルーマニア、スロベニア、スペイン、スウェーデンで報告例はあるものの、EEA内での2022年12月後半時点のXBB.1.5の割合は2.5%未満だった。これまでも米国とEEAでは流行する変異株が異なる場合があったとして、米国でこの変異株が主流になったとしても、必ずしもEEA内で主流となるということではないとした。また、この変異株に感染した場合の重症度などについては、まだ十分な情報が得られていないことから、評価できないとしている。

中国からの渡航者への対応に関するガイドラインを発表

ECDCは2023年1月11日、欧州航空安全機関(EASA)と共同で、中国からの渡航者への対応に関するガイドライン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。これは、EU加盟国が1月4日に、中国からの渡航者に対する水際対策を強化することで一致したこと(2023年1月5日記事参照)を受けたものだ。このガイドラインは、中国とEU間の航空機内での乗員乗客の医療用マスクの着用や、中国からEU加盟国に入国する場合の、出発前48時間以内に実施した迅速抗原検査(RADTs)あるいは出発前72時間以内に実施した核酸増幅検査(NAATs、いわゆるPCR検査など)の陰性証明の提示のほか、中国からの渡航者に対する到着後の無作為検査の実施、空港および中国からの航空機の排水検査のためのサンプル採取の方法などを解説している。

ECDCは、中国で流行している変異株はすでにEEAでも流行しており、新たな変異株は検出されていないことや、EEA内での高い免疫水準などを考慮すると、中国での感染者数の急増は、EEA内の疫学的状況に影響を与えるものではない、との見解を以前から示している。ただし、中国での感染者数などについては、信頼できるデータがないことから、監視を引き続き強化する必要があるとした。今回の発表においても、加盟国は新たな変異株の早期検出に注力すべきとしており、今回のガイダンスは、あくまで新たな変異株が出現した場合の拡散リスクと旅行中の感染リスクを減らすことが目的としている。

(注)EUの全27加盟国とノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン。

(吉沼啓介)

(EU、中国)

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