ベルセ大統領、ダボス会議で演説、真のパートナーシップの必要性を強調

(スイス、世界)

ジュネーブ発

2023年01月20日

スイスのアラン・ベルセ大統領は1月17日、開催中の世界経済フォーラム(WEF)第53回年次総会(ダボス会議)(2023年1月16日記事参照)において、開催地スイスを代表して演説を行った。主なポイントは以下のとおり。

まず、ウクライナへの侵攻について、「戦後秩序は第二次世界大戦後最大の危機を迎えている。ロシアは、ウクライナのみならず、国際法、多国間主義を残酷に攻撃した。スイスは国連安全保障理事会において、国際法と多国間主義の強化に取り組んでいる。気候変動、パンデミック、戦争、移民、核兵器の拡散など、現代の主要な課題は国境を越えた課題だ」と発言。

また、WEFについて、「世界規模の対話のための重要なプラットフォームの1つであり、WEFの創設者のクラウス・シュワブ会長は、過去に『世界最大のリスクが格差の拡大である今、包摂は不可欠である』と警告していたが、それが現実のものとなっている」とした。

民主主義の危機と真のパートナーシップの必要性を強調

ベルセ大統領は、現在、世界中で民主主義が急激に衰退しており、民主的な制度は弱体化し、法の支配はいくつもの国で脅威にさらされていると指摘。「私たちはあまりにも長い間、効率と経済的繁栄に焦点を当て過ぎた。肥料や石油の価格高騰は、不平等を拡大させている。新型コロナウイルスもまた、格差をさらに拡大させた」とし、本当の意味でのパートナーシップが必要だと強調した。また、(アフリカ諸国など)脆弱(ぜいじゃく)な国においては人権と民主主義を強化し、人道的ニーズを考慮しながら、経済的機会とイノベーションを支援しなければならないとした。

さらに、「世界的なワクチンへの公平なアクセスを確保するため、スイスは資金面、政治面でCOVAX(注)を支援した。しかし、いざワクチンを配布してみると、私たちが想像していたようなパートナーシップは機能しなかった」「パンデミックとウクライナでの戦争を通じて、脆弱な国の問題が国境を越えて広がることを知った」と発言。スイスは今後、「最も弱い立場の人々、特に民間人の保護と食糧安全保障の改善に組織的に取り組んでいく」とした。

今回のダボス会議では、ウクライナ情勢への注目度が高いことを反映してか、1月17日に行われた67セッションのうち、12セッションが戦争やグローバリズムに関するものだった。

(注)世界保健機関(WHO)が主導した低・中所得国向けの国際的な新型コロナワクチン供給枠組み。

(竹上嗣郎)

(スイス、世界)

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