第3四半期のGDP成長率、前期比0.1%で大幅に減速

(スペイン)

マドリード発

2023年01月06日

スペイン国家統計局(INE)の1223発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、2022年第3四半期(79月)の実質GDP成長率は前期比0.1%となり、第2四半期(46月)の2.0%から大幅に減速した(添付資料表参照)。

3四半期は、ウクライナ危機以降のエネルギー高騰を背景とした911%前後の高いインフレ率〔消費者物価指数(CPI)上昇率〕と、金利上昇による金融環境の悪化により、新型コロナウイルス禍の間に積み上がった貯蓄の取り崩しが鮮明となった。住宅分野では、ローン契約件数が過去10年間で最高の水準で推移するなど、利上げ前の駆け込み需要が増加した一方、資金調達コスト上昇や資材高騰により新設着工件数は減少傾向に転じており、先行きに不安が見られる。また、新型コロナウイルス感染に対する規制緩和で急回復したインバウンド観光客数は夏以降、伸びが鈍化した。

GDP成長率を需要項目別にみると、民間最終消費支出は前期比0.1%で、前期の1.7%から失速した。好調だった個人消費がマイナスに転じたことが影響した。総固定資本形成もマイナス0.1%と低調で、うち建設投資全般と輸送機器関連の設備投資はそれぞれマイナス0.6%、マイナス6.1%となった。こうした内需の減速に加え、外需も5四半期ぶりにマイナスに転じた。インバウンド観光の減速によって特にサービス輸出が勢いを失ったことによる。

雇用では、失業率は12.7%と前期の12.5%からやや悪化しているものの、前年同期比から2ポイント近く改善されている。また、就業者数はフルタイム換算で前年同期比3.3%増、実数で約2,055万人に達し、景気の底堅さを予想させる材料となっている。

なお、前年同期比では、2022年の第113月)、第2、第3四半期のGDP成長率は、それぞれ7.0%、7.6%、4.4%となっている。これを踏まえて、ナディア・カルビーニョ第1副首相兼経済・デジタル変革相は1223日、「ヨーロッパ・プレス」の動画の中で、2022年全体のGDP成長率は、最終的に政府(4.4%)やスペイン中央銀行(4.6%)などの予測を上回るだろうと述べた。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

ビジネス短信 da70f68b38ec14e1