米テキサス州知事が声明、環境保護庁のパーミアン盆地への大気汚染物質排出規制措置の保留を受け

(米国)

ヒューストン発

2023年01月10日

米国テキサス州のグレッグ・アボット知事(共和党)は1月6日、米国環境保護庁(EPA)による大気汚染物質の排出規制措置の策定が「保留」(inactive)されたことを受け、声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。アボット知事は声明で「パーミアン盆地のEPAの規制措置は、米国で生産される石油の40%に直接的影響を与える超法規制的な規制となる可能性がある」と懸念を示した上で、「バイデン政権がこの悲惨な計画を撤回したことは朗報だ」として歓迎した。一方で「テキサス州にとって重要な石油・ガス産業への雇用を脅かすいかなる攻撃にも対抗する用意がある」「手頃なエネルギー価格と勤労なテキサス州民の生活を危険にさらす可能性のあるバイデン政権の規制変更や攻撃に常に目を光らせる必要がある」として、政権を牽制している。

パーミアン盆地は、テキサス州西部とニューメキシコ州南東部にまたがり、国内有数のシェールオイルとシェールガスの生産地として知られている。米国エネルギー情報局(EIA)によると、パーミアン盆地は米国の石油供給の約25%に当たる日量520万バレルの石油を生産しており、日量約9,500万ガロン(約3億6,000万リットル)のガソリンに精製可能としている。

石油・ガス掘削時に発生する揮発性有機化合物(VOC)は、窒素酸化物や太陽光線に含まれる紫外線と反応して大気汚染物質のオゾンを発生させる。EPAは、大気浄化法(CAA)に基づいて同庁が設定する6つの主要汚染物質の環境大気質基準(NAAQS、注)を設定しており、EPAは同盆地のオゾン濃度がNAAQS基準に適合していないとして、州政府に対応を求めると発表していた。

アボット知事は2022年6月に、EPAが同盆地の大気汚染物質の排出規制を求め、同盆地での石油生産を抑制させ得る動きに対して、ジョー・バイデン大統領に見直しを求める書簡を送り、バイデン政権側がEPAの計画を停止しない場合、テキサス州は石油の生産を保護するために必要な措置を講じると警告していた(2022年7月5日記事参照)。その後、EPAは同年8月に、同盆地での大気汚染物質や温室効果ガス(GHG)の排出源を特定するため、飛行観測を実施すると発表し(2022年8月2日記事参照)、EPAが同盆地の大気汚染物質の排出規制に踏み切るのか否か注目されていた。

ホワイトハウスは1月4日に規制アジェンダと規制計画の統合報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。同報告書は行政管理予算局(OMB)が年2回策定し、連邦政府機関が優先的に取り組む規制措置の概要を示すもの。ブルームバーグ(1月7日)によると、同報告書でEPAの規制策定が保留され、今後少なくとも半年~1年間は最終決定される見込みがないとしている。

(注)EPAは、米国民の健康福祉保護を目的とする大気浄化法(Clean Air Act:CAA)に基づき、大気汚染物質などの排出を規制するために、公衆衛生や環境に有害な6つの主要汚染物質〔一酸化炭素(CO)、鉛(Pb)、二酸化窒素(NO2)、オゾン(O3)、粒子状物質(PM)、二酸化硫黄(SO2)〕に関する環境大気質基準(National Ambient Air Quality Standards:NAAQS)を設定している。

(沖本憲司)

(米国)

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