米環境保護庁、米パーミアン盆地の大気汚染物質を飛行観測、排出源特定へ

(米国)

ヒューストン発

2022年08月02日

米国環境保護庁(EPA)は81日、テキサス州西部とニューメキシコ州南東部の一部にまたがるパーミアン盆地での大気汚染物質や温室効果ガス(GHG)の排出源を特定するため、飛行観測を実施すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同盆地は、国内有数のシェールオイルとシェールガスの生産地として知られている。

今回のEPAの対応は、パーミアン盆地での大気汚染物質の排出規制に向けた布石ともみられる。EPAの飛行観測では、赤外線カメラを使って、石油・ガス事業に関連する、GHG1つであるメタンおよび揮発性有機化合物(VOC)の排出源を特定することを目的としている。石油・ガス掘削時に発生するVOCは、窒素酸化物や太陽光線に含まれる紫外線と反応してオゾンを発生させる。EPAは、大気清浄法(CAA)に基づいて同庁が設定する6つの主要汚染物質の環境大気質基準(NAAQS、注)を設定しており、EPAは同盆地のオゾン濃度がNAAQS基準に適合していないとして、州政府に対応を求めると発表していた。

EPAのアーセア・ナンス第6管区長は「パーミアン盆地は、米国の石油供給の40%を占め、長年にわたり有害なVOCやメタンを大量に発生させ、気候変動や大気環境を悪化させてきた」「本飛行観測は、どの石油・ガス施設がこれらの排出の大部分を担っており、どこを削減することが最も緊急に必要であるかを特定するために必要不可欠だ」と述べている。

一方で、テキサス州のグレッグ・アボット知事(共和党)は、EPAがパーミアン盆地の大気汚染物質の排出規制を求める動きに反対している。アボット知事は627日、ジョー・バイデン大統領に見直しを求める書簡を出し、バイデン政権側がEPAの計画を停止しない場合、テキサス州は石油の生産を保護するために必要な措置を講じると警告している(2022年7月5日記事参照)。

(注)EPAは、米国民の健康福祉保護を目的とする大気清浄法(Clean Air ActCAA)に基づき、大気汚染物質などの排出を規制するために、公衆衛生および環境に有害な6つの主要汚染物質〔一酸化炭素(CO)、鉛(Pb)、二酸化窒素(NO2)、オゾン(O3)、粒子状物質(PM)、二酸化硫黄(SO2)〕に関する環境大気質基準(National Ambient Air Quality StandardsNAAQS)を設定している。

(沖本憲司)

(米国)

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