フィリピン中銀、金融分野の気候変動リスク対処方針を発表

(フィリピン)

マニラ発

2023年01月06日

フィリピン中央銀行(BSP)は12月22日、金融分野の気候変動リスクへの対処方針を定めた「サステナブル・セントラル・バンキング(SCB)・アジェンダ」を発表した(「ビジネス・ワールド」紙2022年12月23日)。BSPはSCBアジェンダに基づいて気候変動リスクを考慮した持続可能な政策を立案・実行し、気候変動が物価や金融システムに対してもたらすリスクを銀行などの金融機関にも認識してもらいたいとしている(政府通信社12月23日)。

SCBアジェンダは11項目で構成し、概要は以下のとおり(「マニラ・ブレティン」紙2022年12月22日)。

  1. 気候変動リスクに対する経済・金融システムの包括的な脆弱(ぜいじゃく)性評価を行う。
  2. 全ての銀行を対象として、気候変動に関連した金融リスクの開示を強化する。
  3. 銀行を対象とした、気候変動に起因するリスクに対してのストレステスト(注1)に係るガイドラインを発行する。
  4. 政府の金融モニタリングで、金融機関の有する環境面・社会面のリスクを評価に加える。
  5. 金融政策分析で気候変動がもたらすマクロ経済への影響を考慮する。
  6. 銀行によるグリーン分野への融資を促進するインセンティブの仕組みを検討する。
  7. BSPの資産運用・リスクマネジメントで、持続可能性を判断材料に加える。また、国連の責任投資原則(PRI)への署名を行う(注2)。
  8. 包括的なグリーンファイナンス(注3)に関するBSPのタスクフォースを強化する。
  9. BSPの年次報告書の中で、金融機関の気候変動関連財務情報を開示する。
  10. BSPの有する施設の運営管理の中で、持続可能な慣行を導入する。
  11. 関連する分野でBSP職員のキャパシティービルディングを行う。

なお、フィリピンは2021年の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、2030年に温室効果ガス排出量について75%の削減を目指すと明言している(2021年11月19日記事参照)。

(注1)大きな負荷がかかる状況を想定し、安全性や耐久性などを維持できるかどうかを調べる手法。

(注2)国連が2005年に公表した投資原則。PRIは世界経済で大きな役割を果たす投資家などが投資を通じて環境問題や社会問題、企業統治について責任を全うする際に必要な6つの原則を明示している。

(注3)温室効果ガス排出量削減、再生可能エネルギー事業への投資など、環境に良い効果を与える投資への資金提供。

(吉田暁彦、サントス・ガブリエル)

(フィリピン)

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