米・メキシコ首脳会談、経済連携や移民問題を協議

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2023年01月11日

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は1月9日、米国のジョー・バイデン大統領とメキシコシティで2国間首脳会合を行った。メキシコ側では、マリア・ルイサ・アルボレス・ゴンサレス環境天然資源相やラケル・ブエンロストロ経済相、マルセロ・エブラル外相ら閣僚級の14人が出席した。米国側からは、アントニー・ブリンケン国務長官、ジーナ・レモンド商務長官、ジョン・ケリー気候変動担当米国大統領特使ら13人が参加した。

AMLO大統領は、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を、北米地域における生産プロセスを強固にするために重要な手段としたうえで、「われわれには若く創造的な労働力があり、技術開発と豊富な天然資源がある。両国は国境を接し輸送コストを節約でき、市場には十分な需要がある」と発言し、北米での共同開発を強化するメキシコの優位性を強調した。

また、ジョン・F・ケネディ元大統領が1961年に実施した「進歩のための同盟」を引き合いに出し、ラテンアメリカおよびカリブ海地域に10年で100億ドルを投資したが、その後半世紀にわたって支援がなかったことを示唆した。さらに、AMLO大統領は「フランクリン・ルーズベルト元大統領の善隣政策に反する、ラテンアメリカとカリブ海に対する忘却、放棄、軽蔑を終わらせる時が来た」と主張した。その上で、バイデン大統領に対し、米国は「南北アメリカのすべての国家間の関係を開き、実質的に改善するためのカギを握っている」と付け加えた。

一方で、バイデン大統領は、西半球の競争力を高めるためのサプライチェーンの強化、フェンタニル(注)に対処するための共同作戦や移民問題について言及した。これらの問題について、「直近15年間で西半球において何十億、何百億ドルを費やしてきた」とし、AMLO大統領の米国の中南米への支援が近年なかったという発言を暗に否定、「われわれは民主的な制度を支援し、構築し続けなくてはならない」と民主的な政治体制を重視する姿勢を強調した。

3カ国首脳会合では、USMCAにおけるエネルギー問題が争点か

会合後の1月10日には、メキシコ、カナダ、米国の3カ国首脳会合が開催される予定だ。「ニューヨーク・タイムズ」紙によると、バイデン大統領は、移民問題、フェンタニルとの戦い、エネルギー問題をめぐる紛争案件について、メキシコ政府からコミットメントを得るという米国国内の政治的圧力に直面している。米国の国家安全保障顧問であるジェイク・サリバン氏は、エネルギー問題に関する合意に達しない場合、バイデン政権はUSMCAに基づきメキシコに対する紛争解決パネル設置要請を正式に提出できると述べている(「レフォルマ」紙1月10日)。

(注)合成オピオイドの一種で鎮痛剤として使用されるが、米国では過剰摂取による死者が増えており、社会問題になっている。

(阿部眞弘)

(メキシコ、米国)

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