欧州27産業団体、欧州委のデューディリジェンス指令案に提言

(EU)

ブリュッセル発

2023年01月27日

欧州産業連盟(ビジネスヨーロッパ)など欧州で活動する27産業団体(注)は1月19日、欧州委員会が2022年2月に発表した企業持続可能性デューディリジェンス指令案(2022年2月28日記事参照)について共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。

27団体は、EUレベルの人権・環境デューディリジェンス(以下、人権・環境DD)に関する法的枠組みの策定は支持するものの、より持続可能なサプライチェーンの実現に向けて、現実的で、比例性があり、企業にとって実行可能なものであるべきだとした。

その上で、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会に対して、産業界からの以下の提言や懸念を、本指令案の審議において考慮に入れることを求めた。

  1. EU単一市場内の細分化を防ぐため、域内で完全に調和されたルールとする。
  2. バリューチェーンの全ての側面を対象とすることは非現実的で実行不可能だ。企業が最もリスクが高い事項に優先的に取り組み、リスクベースのアプローチによって、課題の解決に自由に適切な対応策を取れるようにする。
  3. 企業の取締役に対して人権・環境DD実施の推進・監督といった義務を課すことは、各国の会社法制度への介入など、むしろ悪影響がある可能性があり、不必要だ。
  4. 指令案の付属書にある人権・環境DD実施の根拠とする条約などのリストは広範囲にわたっており、法的不確実性を生む可能性がある。多くの条約は法人格ではなく国を対象とするため、リストを見直すとともに、企業に直接適用される要件を明確にし、どのように実施すべきか指針を示す必要がある。
  5. 人権・環境DDの実施は企業にとって何よりもまず手段の義務であり、企業が引き起こしたものではない、または直接関与しない損害については、企業はその責任を負わないという原則に立って、企業の責任に関する条項を見直す。
  6. 指令案の適用開始前に、企業向けの明確な指針を採択し公表する。企業の取り組み支援のため、ステークホルダー間または産業界としてのイニシアチブもより重視される必要がある。
  7. 企業がグループ企業、または関連企業と連携して、人権・環境DDの実施に取り組む可能性を認める。

27団体は声明の結尾において、産業界は内容の修正について引き続き建設的に関わっていく用意があるとした。

(注)在欧日系ビジネス協議会(JBCE)など欧州で活動する第三国の産業団体も含む。

(滝澤祥子)

(EU)

ビジネス短信 c2bc076b146212a7