ベンガルール進出の日系IT企業、ジェトロ主催のセミナーに登壇

(インド、日本)

ベンガルール発

2023年01月06日

在日インド大使館の「ヴィヴェーカナンダ文化センター」で1219日、ジェトロ主催の「J-bridge×インド・シフト特別セミナー」が開催された。冒頭、ジェトロの仲條一哉理事が開会あいさつを行い、ジェトロ(ベンガルール)、ベンガルールのコンサルタント会社ジノブ(ZINNOV)のプレゼンテーションの後、慶応義塾大学SFC研究所上席所員(日印研究・ラボ)の武鑓行雄氏が基調講演を行った。メルカリ執行役員CTO Marketplace 兼取締役・Managing Director of Mercari Indiaの若狭建氏、ラクスル上級執行役員・CTO/SVP of Technology, Director of Raksul India Private Limited泉雄介氏、楽天グループITストラテジー部ジェネラルマネージャー・楽天インド法人副会長の白石翼氏を迎えて、パネルディスカッションが行われた。

パネルディスカッションに参加したメルカリ、ラクスル、楽天はいずれもベンガルールに拠点を設立し、サービスの開発を行っている。中でも、楽天は最も早い2014年に6人で拠点を設立し、現地CEOCPOも含めインド人でオペレーションを行い、従業員数は約2,000人に上る。20228月には市内中心部に新オフィスを構え、楽天モバイルが買収した子会社のインド人従業員を加えると、インド国内で5,500人を超える。また、ラクスルは2020年に、メルカリは20226月に拠点を設立している。

ベンガルールは、1980年代から米国テック企業のオフショア拠点として発展したが、その後、インフォシス(Infosys)やウィプロ(Wipro)などのインドIT企業が台頭するとともに、多くのグローバル企業が巨額の投資をして、全世界向け製品サービス開発拠点を置いている。ジノブとナスコム(Nasscom)のレポート(ZINNOV-NASSCOM INDIA GCC TRENDS – QUARTERLY ANALYSIS Q2 2022外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、ベンガルールにはグローバル企業の開発拠点が740以上あり、IT人材は47万人以上に上る。日本企業もソニーや東芝など開発拠点を置いているが、他国のグローバル企業などと比較すると、数や規模は限定的だった。しかし、近年では楽天、ラクスル、メルカリなど、勢いのある日本企業が進出したことから、日本企業からの注目が再度高まっている。

パネルディスカッションでは、日本国内のIT人材不足が深刻な中、IT人材が質量ともに十分にあるインドに注目するのは非常に合理的な判断だったこと、他方、社内上層部の説得には相当な時間をかけ丁寧に進めたこと、採用活動ではカルチャーフィットに最も重点を置いていること、組織マネジメントについては日本との文化の違いを意識しながら、相当根気良く取り組んでいることなど、さまざまな議論がなされた。

特に武鑓氏は「日本企業の間でインドは巨大マーケットとして認識されているが、インドのIT人材を活用しインドでイノベーションを興すという発想にはまだ追いついておらず、啓発活動が必要」と語った。

このセミナーの内容は後日、J-BRIDGEポータルサイトに掲載する予定。

写真 セミナーの様子(ジェトロ撮影)

セミナーの様子(ジェトロ撮影)

(夏見祐奈)

(インド、日本)

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