米ケマーズ、フランスでイオン交換膜を生産、フランス政府が支援へ

(フランス、米国)

パリ発

2023年01月18日

米国の化学メーカーのケマーズは1月11日付プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、フランス北部オー・ド・フランス地域圏のビリエール・サンポール工場に2億ドルを投資し、水素製造に用いられるイオン交換膜「ナフィオン(Nafion)」を生産すると発表した。グリーン水素の需要拡大に対応し、欧州および世界規模での脱炭素化の推進に貢献する。

同社のマーク・ニューマン最高経営責任者(CEO)はフランスへの投資を決めた理由について、フランス政府が掲げる水素経済を実現する目標と自社の持続的成長戦略が合致したことや、EUが進めるクリーンエネルギーへの移行が自社の事業に追い風となることなどを挙げた。同工場の増強に伴い、約80人のフルタイム従業員を含む計130人程度を新たに雇用する計画だ。

フランス経済・財務・産業およびデジタル主権省のロラン・レスキュール産業担当相は1月12日、ケマーズの投資プロジェクトはフランスにおけるグリーン水素製造セクターの発展につながると歓迎の意を表明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。フランス貿易投資庁(Business France)を中心にした外資誘致支援が実を結んだと評価するとともに、フランス環境・エネルギー管理庁(ADEME)が実施する製造業の脱炭素化ソリューションに関わるプロジェクト入札の枠内で、同プロジェクトに資金援助を行う方針を明らかにした。

フランス政府は、2030年までにフランスをグリーン水素で世界のリーダーとする目標を掲げ、国家投資計画「フランス2030外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の枠内で水素関連セクターに90億ユーロを投資する計画を打ち出している。2030年までに国内に6.5GW(ギガワット)の水電解装置を設置し、年間65万トンのグリーン水素の製造を目指す。

政府はこれまでに、水電解装置、水素貯蔵装置、燃料電池の製造および技術開発など10件の水素関連プロジェクトに、計21億ユーロの資金援助を行うことを決めた(2022年9月30日記事参照)。

また、同計画の中で、地方における水素エコシステムの整備に総額7億7,500万ユーロを充てる方針を示しており、ADEMEを通じてプロジェクト入札を実施している。同庁が2022年5月に発表した中間報告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによれば、応募があった59件のプロジェクトのうち、電力を使った水素製造拠点や燃料電池トラック向け水素ステーションの設置など18件のプロジェクトが最終審査に進んだ。

(山崎あき)

(フランス、米国)

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