2022年の失業率は過去最低水準も、厳しい労働条件下での就労率が高まる

(メキシコ)

メキシコ発

2023年01月30日

メキシコの国立統計地理情報院(INEGI)の1月26日付プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、2022年12月の失業率は2.76%となり、2005年に現行方法で雇用統計を取り始めてから過去最低の水準となった(添付資料図参照)。2022年の失業率平均も3.27%となり、前年の4.14%から0.86ポイント低下して同じく過去最低となった。就業者と失業者の合計である労働力人口が生産年齢人口(15歳以上の人口)に占める比率(労働参加率)も前年平均から1.13ポイント上昇し、59.68%に達した。

メキシコの雇用環境は大きく改善しているようにみえるが、メキシコの場合は失業保険の制度が不十分(注)であり、インフォーマルな就労形態であっても、就労しなければ生活が維持できないという側面がある。メキシコの就業人口に占める雇用契約および社会保険への加入がなく、税金も納めていないインフォーマル就労の比率は2022年平均でも55.34%に及び、2021年平均と比べても0.55ポイントしか低下していない。インフォーマル就労者のうち、露天商、行商人など家計から独立した事業所としての形態を伴わない、いわゆる非合法な事業所で働く就労者はインフォーマル部門と呼ばれるが、就業人口全体の28.26%(2022年平均)、インフォーマル就労者全体の約半数を占める。なお、インフォーマル部門以外のインフォーマル就労者としては、家政婦など家内労働者(約215万人)、自給自足的農業などの農牧業従事者(約613万人)に加え、企業や政府など合法的な事業所で働く労働者であっても雇用契約や社会保険登録を伴わない労働者(約746万人)が存在する(添付資料表参照)。

厳しい状況下で働く労働者が前年より増加

INEGIは、就労者のうち、1週間に35時間以下しか働いていない、または最低賃金未満の収入しかない、あるいは48時間以上働きながらも最低賃金の2倍以下の収入しかない労働者の比率を危機的状況就業率(TCCO)として発表している。TCCOは2022年平均で30.21%に達しており、2021年よりも5.26ポイントも上昇している。完全失業率の低下が、メキシコの世帯の生活水準の向上を必ずしも意味していないことがわかる。なお、就労人口のうち、機会があればより多くの時間就労したい、またその必要があると考える就労者の比率を不完全就業率として発表している。不完全就業率は2022年平均で8.29%と前年比4.27ポイント低下したが、依然として8%を超えており、完全失業率と合わせると11.6%に及ぶため、完全失業率の水準から労働市場が米国のように逼迫していると判断することはできない。

(注)社会保険庁(IMSS)や公務員社会保険庁(ISSSTE)に加入する正規労働者は、雇用主および労働者本人が毎月積み立てる確定拠出型の年金基金にたまった金額の一部を失業時に引き出して使うことができるが、多くの場合、日本など他国と比べると失業期間中の生活を支える金額としては不十分なものとなる。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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