川崎重工とフランス石油大手トタル、自律型無人潜水機を用いた共同研究海上試験に成功

(日本、フランス、米国)

ヒューストン発

2023年01月20日

川崎重工は112日、兵庫県淡路島沖で同社の自律型無人潜水機(AUV)の「SPICESubsea Precise Inspector with Close Eyes)」と、フランス石油大手トタルエナジーズ(本社:パリ)の「LTCPLight Touch Cathodic Protection)」と称する防食電位計測技術(注1)を用いて、海底パイプライン近接検査の防食電位計測に関する共同研究海上試験を行い、成功したと発表した。

発表によると、川崎重工は2020年に行った「海洋石油・天然ガスに係る日本財団-DeepStar(注2)による連携技術開発助成プログラム(2019年5月23事参照)」での実証実験で、SPICEを用いて海底パイプラインを自動で走査・追従して航行する能力と、検査センサーを海底パイプラインに対し正確に位置取りする機能について十分な有効性を確認した。この実証結果を基に、川崎重工はトタルとの共同研究プロジェクトを202010月に開始した。その後、両社が協力してSPICELTCPの統合システム設計、SPICE本体の改良を重ね、202289月に淡路島沖で海上試験を実施し、今回発表の模擬海底パイプラインの防食電位計測に成功したとしている。

川崎重工のAUV事業推進部開発・設計課の岡矢紀幸課長は「今回の海上試験では、LTCPとのコンビネーションで有用な検査データを取得でき、2020年に続いて、SPICEのパイプライン近接検査のプラットフォームとしての能力を実証できた。今後もさらなる可能性を求めて開発を続けていく」と述べた。

川崎重工は今後、より一層の無人化・自動化のマーケットニーズを適える水中機器として需要拡大が見込まれるAUV市場向けに、高性能・高品質な製品の開発を推進し、AUVの商用拡大を目指し積極的に取り組んで行く方針としている。

なお、ジェトロは20185月の日本財団とDeepStarMOU締結段階からこのプロジェクトを支援している。これまで日本財団とDeepStarの連携技術開発案件の組成や、各プロジェクトのパートナーとなる日本企業とDeepStarの契約締結支援、ウェブ会議を通じたプロジェクトの進捗管理などを通じて、採択された日本企業に対し積極的な支援を行っている。

(注1)海底パイプラインの自然腐食などを防止するため、電位を通じて腐食の状態を確認する技術。

(注2DeepStarは、上流企業と呼ばれるシェブロン(米国)、シェル(英国)、トタル(フランス)など、世界中の海洋石油・天然ガスの探査・開発・生産を担う企業や、これら企業に製品・サービスを提供する企業、大学、研究機関などから成る海洋技術開発のコンソーシアム外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

(沖本憲司)

(日本、フランス、米国)

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