国税庁が2023年の徴税強化に向けたマスタープランを発表、一時輸入や特恵関税活用にも留意

(メキシコ)

メキシコ発

2023年01月31日

メキシコ国税庁(SAT)は1月29日、公式ツイッターを通じて「2023年の税務調査・徴税マスタープラン」を発表した。同マスタープランは、SATの徴税局(AGR)、大規模納税者局(AGGC)、連邦税務調査局(AGAFF)、貿易調査局(AGACE)が共同で作成したもので、2023年の、(1)徴税当局としての徴税強化に向けた活動の指針、(2)具体的な徴税強化策、(3)重点産業分野、(4)検証を強化する課税概念・納税者の租税回避行為、を明らかにしている。

(1)としては、納税者の自主的な義務履行を促すこと、納税義務不履行や納税差異の修正についての納税者の自発的対応を促すこと、租税債務の回収を最適化するプロセスの構築、州政府徴税局との協力の推進、などを挙げている。(2)としては、インボイス偽造業者の摘発、従業員の人件費を不正に低く申告するサービス業者の摘発、密輸撲滅に向けた街道・倉庫などにおける査察強化、不自然な収入や支出に関する調査・分析の強化、貿易オペレーションの検証強化(特に一時輸入や特恵貿易協定における原産地の検証)、2020年および2021年の「実効税率」(注)の発表、を挙げている。

(3)としては、鉄鋼、食品、自動車産業など16の産業分野(添付資料参照)を重点徴税強化セクターとする。(4)としては、税金の不正な還付申請、付加価値税(IVA)の税率0%や免税対象行為および一時輸入、輸入手続きにおけるアンダーバリュー申告や貿易協定の不正な活用など15種類の課税概念や租税回避行為を挙げている(添付資料参照)。

現政権下で大規模納税者を中心に大幅な徴税増

SATによると、徴税効率化および税務調査の成果による徴税額として、現政権下の2019~2022年の4年間だけで前政権下6年(2013~2018年)の金額を7,761億3,900万ペソ(約5兆3,553億5,900万円、1ペソ=約6.9円)上回る1兆9,764億4,600万ペソの徴税を実現している。2022年も前年比17.5%増と税務調査などを通じた徴税額は年々増えているが、SATの徴税強化策の中には、国立統計地理情報院(INEGI)が雇用全体の56%弱、GDPの2割強を占めると推計するインフォーマル経済の徴税基盤を強化する対策が乏しく、多国籍企業など大企業を中心とした既存の納税者への徴税強化策が中心であるため、厳しい税の取り立てを受ける経済界からの反発は強い。

(注)一般的に理解されている実効税率の概念とは異なる。企業の利益ではなく売上高に占める実際の納税額を「実効税率」と称し、大規模納税者の納税額を基に2016~2019年の産業分野別平均値を専用ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公表している。費用控除が多い業界ほど、「実効税率」は小さくなる。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

ビジネス短信 62c37436ac10e45e