ネットゼロ達成に向けた政策のレビュー「ミッションゼロ」公表

(英国)

ロンドン発

2023年01月19日

英国の下院議員で元エネルギー担当相のクリス・スキッドモア氏は1月13日、英国のネットゼロ達成に向けた政策に関するレビュー報告書を発表した(英国政府プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。英国政府は2022年9月に経済情勢の変化を踏まえ、経済的に効率的な方法での2050年までの確実なネットゼロ達成に向け、レビューを実施することを発表。レビューを主導する立場としてスキッドモア氏を任命していた(2022年9月9日記事添付資料参照)。

レビューでは「ネットゼロ」は「21世紀の成長機会」とし、適切な公的および民間投資を行えば、英国はそれを生かせる位置にいると説明。

分析によると、「ネットゼロ」は依然として正しい道筋であり、戦略で示した政策を今後も進めるべきと結論付けた。しかし、企業や地域が望むペースで成長するのを阻害する問題があるという意見もあった。圧倒的に共通する意見は、政府からの明確性、確実性、一貫性、継続性が必要という点で、各セクターからは長期的かつ安定的な投資計画が必要との指摘があった。これらを踏まえ、レビューでは、グリッド(送配電系統)、太陽光、陸上風力、原子力などの2035年までの官民の行動における10の優先事項を明記した(添付資料表参照)。また、大きな経済的チャンスと気候変動によるリスクの増大という背景の下、政府に対して129の具体的な提言を行っている。このうち、今後2年間で実施すべき主要活動として、ガスボイラーの段階的廃止期限の前倒し(2035年から2033年へ)の法制化や、油田・ガス田での余剰ガス焼却処分廃止の前倒し(2030年から2025年へ)など、25項目の推奨事項を整理した。

レビューの内容に対して、各業界団体はおおむね支持を表明。その上で、エネルギー企業の業界団体エナジーUKは特に陸上風力や太陽光発電の新設を遅滞なく進めること、原子力産業協会(NIA)は大規模発電所と小型モジュール式原子炉双方の新設をサポートする新たな原子力機関の早期新設、再エネ事業者の業界団体リニューアブルUKは再エネのグリッド接続容量確保に向けた機敏なアプローチの必要性などについて、それぞれの視点から強調した。

(菅野真)

(英国)

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