新政権発足により開発商工サービス省が復活、産業界との対話促進に期待

(ブラジル)

サンパウロ発

2023年01月06日

ブラジルで1月1日、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ氏が大統領に就任し、新政権が発足した。また、1月1日付大統領暫定措置令1,154号により、閣僚を含む37ポストを定めた。前政権の26ポストから11ポスト増加した。前政権下での経済省が、財務省、開発商工サービス省、企画・予算省、行政管理・公共サービス革新省の4つに分かれたことなどがポストの増加に影響した。

財務相には、第1期(2003~2006年)および第2期ルーラ政権(2007~2010年)の下で教育相(2005~2012年)を務めたフェルナンド・アダジ氏が就任した。アダジ財務相は2023年1月2日に行われた就任演説で、財政再建やインフレ対策の必要性を強調した。財政再建のために新たな施策を6月までに提示することにも触れた。また、社会を重要視し、雇用創出や適切な収入・給与の確保、食など生活関連の消費におけるインフレなどを考慮した適正な価格を具体的な課題とした。

開発商工サービス相には、ジェラウド・アウキミン氏が副大統領と兼任し、就任した。2022年4月8日付当時の現地紙「グローボ」によれば、中道寄りの同氏が就任する場合は、企業家などの支持を集める狙いがあると分析していた。アウキミン開発商工サービス相は1月4日の就任演説で、国内の工業分野を強化するため、2019年から経済省として統合されていた開発商工サービス省を復活させ、雇用、税収、富の分配に資する工業を再建する政策を展開すると説明した。

ブラジル地理統計院(IBGE)によれば、同国GDPに占める工業の割合は過去20年間で11ポイント減少した。2002年における工業の割合が29%だったものが2021年には18%となっている。1995年をベースとした金額でみても、農業は20年間で1.78倍、サービス業が1.61倍となっているのに対し、工業は1.28倍にとどまる。アウキミン開発商工サービス相は、産業別で税収をみた場合、工業は29.5%となっていることからも政府として重要視していることを説明した。アウキミン氏はまた、工業を強化する具体的な手法として税制改革を挙げ、工場を保有する企業などの課題として税制の複雑さなどが、いわゆるブラジルコストを生み出しビジネス環境改善に影響していることを理解している、とした。その他、工業の強化として、グリーン経済、脱炭素、バイオ産業などに特化した事務局を省内に設置することで国内産業の競争力強化を図るとした。

ブラジル全国工業連盟(CNI)は、2018年に開発商工サービス省が経済省と統合された際、経済省の誕生はマクロ経済の管理が主となり、各産業向けの政策が希薄化されることを懸念していた(2018年10月30日付CNI公式サイト)。この度の開発商工サービス省の復活を踏まえ、CNIは2022年12月22日付の公式サイトで、近代的な産業政策の確立を同省が担うこと、および工業分野の企業活動が集中しているサンパウロ州の知事を歴任したアウキミン氏の手腕にも期待を寄せていると発表した。2022年7月7日付の現地の自動車業界紙「オートモーティブ」も、開発商工サービス省が復活することは政府と民間セクターの対話を促すとしていた。

(古木勇生)

(ブラジル)

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