スイス政府、「熱エネルギー戦略2050」を発表

(スイス)

ジュネーブ発

2023年01月31日

スイス連邦エネルギー局は1月19日、「熱エネルギー戦略2050」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。スイスの熱供給は、2050年までにカーボンニュートラルを実現しなければならない。同戦略はその道筋を示すものだ。

現在、スイスのエネルギー消費の約50%、二酸化炭素(CO2)排出量の35%以上が熱エネルギーによるものだ。スイスが掲げる温室効果ガスのネットゼロを達成するためには、2050年までに全ての熱需要(暖房、建物の給湯、工場での加熱工程や熱処理)を、CO2を排出しない再生可能エネルギーで賄う必要がある。

熱エネルギー戦略2050は、2013年発表の報告書「エネルギー見通し2050外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」における政策シナリオの計算に基づき、気候目標達成には、化石燃料を再生可能エネルギーへ代替することと、熱エネルギー消費を2050年までに2020年比で約30%削減することが欠かせないとする。戦略の策定に当たっては、約60の団体(自治体、州政府、エネルギー供給会社、建設業界、企業団体、教育機関、環境団体など)に相談が行われた。これらの約7割が上述の戦略案は「現実的」または「どちらかといえば現実的」と回答し、寄せられた意見が戦略の最終版に反映された。また同戦略には、「2050年目標」として、10の分野(建築効率、暖房システム、工業における熱、熱ネットワーク、熱貯蔵、電化、再生可能ガスと合成燃料、連邦政府・州政府・地方自治体、法律、熟練労働者)における対策が図解で示された。

熱エネルギー戦略2050は、スイスのエネルギー供給システム、特に熱分野における脱炭素化対策のガイドラインとなるよう策定された。ネットゼロ実現には現行の政策では不十分で、さまざまな施策が国会で議論されており、既に実施準備が整ったものもあるとした。CO2法の改正などは、化石燃料による暖房システムから再生可能エネルギーによる暖房システムへの転換を支えている。再生可能エネルギーによる電力の安定供給に関する法律、水力発電のラウンドテーブルで策定されたプロジェクト、2022年秋の国会で採択された太陽光発電拡大に関する条項は、エネルギー効率と再生可能エネルギーの拡大を促進するものだ。2022年8月には、連邦環境・運輸・エネルギー・通信省、州エネルギー局長会議、スイス自治体協会が「熱ネットワーク開発憲章」を採択し、共同開発を開始した(2022年12月26日付地域・分析レポート参照)。さらに、連邦エネルギー局は現在、業界と協議しながら水素戦略も策定している。

(竹原ベナルディス真紀子、マリオ・マルケジニ)

(スイス)

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