カナダ進出企業への円安カナダ・ドル高の影響は限定的、ジェトロ海外進出日系企業実態調査

(カナダ、日本)

米州課

2023年01月13日

2022年3月からみられた円高カナダ・ドル安傾向を受け、ジェトロが2022年9月に実施したアンケート調査「2022年度海外進出日系企業実態調査(北米編)」で円安カナダ・ドル高による影響を聞いた。調査結果によると、円安カナダ・ドル高による「影響がない」と回答した企業が全体の33.3%と最も多かった。「プラスの影響」と回答した企業は2割強(23.3%)を占め、「マイナスの影響」(14.0%)と回答した割合を上回った。

為替水準が業績にもたらす影響はないと回答した企業は、その理由として、日本円での取引が限られている点や、米ドル建ての決済が多いことなどが挙げられた。為替水準がもたらす「プラスの影響」には、「カナダ・ドルとほぼ連動している米ドルの上昇により原材料調達面で有利に」なる点(ゴム・窯業・土石)や「円換算の売り上げ増加、円建て支払いのコスト減少」(販売会社)、「日本の本社側に為替差益が発生」する点(販売会社)などが挙げられた。一方、「マイナスの影響」には、「日本からの委託生産費の上昇」(一般機械)が挙げられた。

円安カナダ・ドル高への対応策としては、「顧客との契約内容見直し」(情報通信業)や「為替予約」(商社・卸売業)などが挙げられた。米ドルで取引が多い企業については、「米ドル調達タイミングの調整」も対応策として挙げられた。

適正と考える為替相場については、1カナダ・ドル当たり「85円以上90円未満」「95円以上100円未満」と回答した企業がそれぞれ25.5%と最多で、80円以上100円未満の範囲を適正な為替水準とみる企業が84.0%を占めた。円カナダ・ドルの相場は2022年3月ごろから円安基調で推移し、調査期間中の9月9日には1カナダ・ドル=109円97銭を記録した。その後、11月中旬から円高基調へと変化し、2023年1月10日(日本時間)時点では98円51銭と、多くの企業が適正と考える為替水準で推移している。

通商環境の変化が「全体としてマイナスの影響」と回答した割合は2割弱

通商環境の変化が2022年の業績に与える影響について、「影響はない」が44.3%と最も多く、「わからない」(25.2%)、「全体としてマイナスの影響」(19.1%)が続いた。「わからない」と回答した割合は前回(31.4%)から6.2ポイント減少した一方、「影響はない」と回答した割合は3.6ポイント増(前回40.7%)、「全体としてマイナスの影響」と回答した割合は2.2ポイント増となった(前回16.9%)。業種別では、「全体としてマイナスの影響」があると回答した割合が一般機械で57.1%と高かった。

「全体としてマイナスの影響」と回答した企業のうち、影響を受ける政策には「米国の通商法301条に基づく追加関税」(40.9%)を挙げる割合が最も多く、「米国の鉄鋼・アルミニウムを対象とした追加関税賦課」(31.8%)が続いた。通商環境の変化が与える具体的なマイナスの影響としては、「商品のコスト増、ソース管理などの負担増」(商社・卸売業)、「一部顧客の経営状況の悪化など」(金融・保険業)が挙げられた。また、「マイナスの影響」があると回答した割合の高かった一般機械の企業からは、「鉄鋼製品に対する関税が販売に影響」「日本、米国支社からの輸出入に影響」「サプライチェーンが米国を経由しており、関税は製品コストにマイナスの影響を与える」など、関税賦課によるコスト増がマイナスの要因として多く挙げられた。

(滝本慎一郎)

(カナダ、日本)

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