米国進出企業、円安ドル高による影響は限定的、ジェトロ海外進出日系企業実態調査(北米編)

(米国、日本)

米州課

2023年01月05日

ジェトロは2022年9月に実施したアンケート調査(注1)で、円安ドル高(注2)が在米日系企業の経営に与える影響について聞いた。それによると、「全体としてプラスの影響がある」と回答した企業が最多の32.1%を占めた。「影響がない」(26.2%)、「マイナスとプラスの影響が同程度」(18.5%)が続き、「全体としてマイナスの影響がある」は14.9%にとどまった(添付資料図参照)。

プラスの影響があると回答した企業からは、「日本から輸入する原材料の価格が下落した」(食料品)、「日本本社で製造された製品・システムの価格が下落した」(一般機械)など、日本からの輸入コストの減少につながったとの声が聞かれた。影響はないとした企業からは、「米国法人の決済はドル建てで行っていることから影響はない」(販売会社、化学・医薬品)など、為替変動の影響を受けないことが要因として挙げられた。一方で、マイナスの影響があるとした企業からは「新規投資にあたっての投資額の増加」(鉱業・エネルギー)、「駐在員の人件費の高騰」(プラスチック製品、情報通信業)など、為替差損による負担増が理由に挙がった。

適正と考える為替相場は1ドル当たり「110円以上115円未満」が30.4%で最大だった。「105~110円」「115~120円」と回答する企業も多く、105円以上120円未満の範囲を適正とみる企業で70.4%を占めた。なお、米国連邦準備制度理事会(FRB)が公表する外国為替レート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2022年後半にかけて、ジェトロが調査基準点とした6月の期中平均値の1ドル=134.0円からさらに円安ドル高が進行し、10月20日には149.8円を記録し、同月の期中平均値は147.1円となった。12月の期中平均値は134.9円と円高に振れ、2023年初めには一時130円を下回ったものの、依然として在米日系企業が適正と考える為替相場水準からは乖離した状況が続いている。

なお、円安ドル高への対応策では、「為替予約」(プラスチック製品、ゴム・窯業・土石)のほか、「取引や借り入れの円建てからドル建てへの変更による為替リスクの低減」(鉄・非鉄・金属、自動車部品)のほか、在庫調整や発注調整などが挙げられた。

(注1)調査結果は「2022年度海外進出日系企業実態調査(北米編)」を参照。調査実施期間は2022年9月8~30日(日本時間)。調査対象は在米日系企業(製造業・非製造業)のうち、直接出資と間接出資を含めて、日本の親会社の出資比率が10%以上の企業および日本企業の支店の計1,841社。有効回答数は787社(有効回答率42.7%)。調査は原則として年1回実施しており、米国では1981年以降これが41回目。

(注2)2022年6月の為替水準が経営に与える影響についてアンケートで聞いた。

(葛西泰介)

(米国、日本)

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