米ニューヨーク州、光熱費延滞に6億7,200万ドルの財政支援発表

(米国)

ニューヨーク発

2023年01月23日

米国ニューヨーク(NY)州は1月19日、州内の住民と小規模企業に対し、支払い不能となっている滞納の電気・ガス料金の返済のため、6億7,200万ドルを拠出すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同プログラムは、新型コロナウイルス感染拡大によって蓄積した公共料金の滞納を相殺するもので、NY州は2022年6月に5億6,700万ドルの拠出を発表しており、これに続くものとなっている。今回の発表について、州史上最大の公共サービス利用者向け金融支援プログラムだとしている。

前回のプログラムは低所得者層を対象としたのに対し、今回は低所得者以外の住民と小規模企業が対象で、エナジー・アフォーダビリティ・プログラム(Energy Affordability Program)という州の光熱支援プログラムへの事前登録者に対する電気・ガス料金の請求に自動的に財政補助を適用する仕組みとなる。NY州によると、47万8,000人の住民と5万6,000社の中小企業が対象となる見込みという。また、同プログラムとは別に、支援の対象とはなっていない年収7万5,000ドル未満の州民80万人以上に対し、電気料金支援として2億ドルを拠出することも表明した。米国では光熱費の滞納は信用スコアの低下につながり、銀行での審査などにも悪影響をもたらす可能性があるが、NY州は今回のプログラムによって信用スコアの大幅な低下を防ぐ可能性があるとする。

米国では今冬、暖房費が高騰しており、エネルギー情報局(EIA)の事前見通しでは、北東部の暖房用のガス支出は前年同期比23%増、電気の支出は11%増が見込まれている(注)。また、民間企業でも長引く高インフレの中で資金繰りは厳しくなっていると考えられる。民間調査機関アライナブルが2022年11月に6,236人の小規模事業主を対象に実施した家賃支払いに関する調査によると、滞納率は11月に41%に達し、2022年初以降で最も高くなったという。理由として、賃料の上昇に加え、消費者の支出額縮小やインフレの影響が挙げられているが、NY地域では全国平均よりも高い49%の事業主が家賃を滞納していると回答している。

1月18日公表の各地域の経済概況をまとめた連邦準備制度理事会(FRB)のベージュブックでも、NY州を含む地域の景況感は前期に比べて大幅に悪化したとし、今後数カ月で経済活動が改善は見込まれないとの企業関係者の声が挙げられている。NY市では既に2024年度(2023年7月~2024年6月)予算案が発表されているが(2023年1月16日記事参照)、足元で冷え込みがみられる景気を前に、有効な施策が打ち出せるかどうか、NY州の2024年度予算案にも注目が集まる。

(注)米国全体の暖房費高騰の見通しについては、2022年10月14日記事参照

(宮野慶太)

(米国)

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